6.腹が減ってはナントヤラ


 
 紅茶はとっくに飲み切ってしまった。外も完全に陽が落ちた。
できる限りの話題で引き留めたが、もうそろそろネタ切れだ。
お茶に誘うのも精一杯だったのに、「1人にしないで」とは到底言えない。そもそも私たちはそんな事を言えるような関係性ではない。残念なことに。

 二人の間に沈黙が流れた。限界だった。恥とかそういうのはもうかなぐり捨てた。こちらも必死なのだ。

「七海君、もう帰っちゃう……?」

 すがるような眼で七海君を見つめた。彼はおでこに手をやり俯いて大きく息を吐いた。

「…金縛りが起きる時まではそばにいますよ。あなたさえよければ、ですが。」
「ほんと!? 」
「怖がってる友人を置いていくほど人でなしではありません。」
「…オールで映画とかしちゃう?」
「……なんか楽しんでません?」
「とんでもない、大真面目です。」


どうせ寝られないのなら徹夜で映画を見てやろうと思い近所のレンタルショップで借りていたDVDを数枚手に取る。海外アニメ、恋愛物、オカルトホラー…。
 結局デッキにセットしたのはオカルトホラーだ。
七海君に金縛りにあっておいてなんてものをチョイスするんだという目で見られたが、ロマンティックなシーンがありそうな映画を流したらなんだか気まずいし、七海君がアニメを見ているのは想像できなかった。
それに、七海君がいればそんなに怖くないかなとも思った。
 どちらにせよこの状況では映画に集中できないだろうし、誰かがいたら金縛りも起きないかもしれない。

 冷蔵庫から缶チューハイや作り置きのおかずを出し、テーブルの上にどんどんと置いていく。スナック菓子も出した。
 品の良い七海君の口には合わないかもしれないが精一杯のもてなしはしておこうと思った。

「映画のお供につついてね。」
「人の手料理なんて久しぶりです。」
「大した物用意できなくてごめんね。」
「十分すぎます。いただきます。」
 
本当に色気のない家庭的な物ばかりだったが、七海君の箸は止まらなかった。一応お口には合ったみたいだ。よかったと胸を撫で下ろした。
 おかずからスナック菓子に手がうつり始めたところでリモコンの再生ボタンを押した。

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