ざあざあと途切れることのない雨。
朝に見た今日の天気予報は1日晴れだったはず。


午前中は予報通りに青い空が見えていたのに今は厚い雲が頭上を果てしなく覆っている。
にわか雨には注意しましょう、ともしかしたらお姉さんが言っていたような言ってなかったような。けれど後悔しても時すでに遅し。

わたしは残念なことに傘も置き傘も持っていない。

委員会さえなければ小降りで済んだし友達もまだ残っていただろうに。
今は18時30分。
雨だから外の部活もいつもより短い室内練習で切り上げていて、1人でたたずむ昇降口は心細い。

仕方ないから少しでも弱くなるまで待とう、と下駄箱の段差に座り込む。下駄箱は埃っぽいし雨でジメジメするし帰りは遅くなるし今日は本当ツイてない。
何時になったらざあざあがポツポツに変わるだろうか。


「何やってんの。」

振り向くと"悪童"という名で知れている花宮真。
彼の手には一本の傘。

「…用意周到な花宮くんと違って傘がないんですぅ。」

惨めな女だな、と吐き捨てて上履きから登校用の靴に履き替える。靴ひもをしっかりと結び直す彼は丁寧な性格なのかもしれない。

でも性格悪いよね、コイツ。
同じクラスの女の子が傘がなくて困っていたら某アニメ映画のカンタ君のように、ん!という一言で傘を貸すべきだ。そしてわだかまりが解けて仲良くなるというストーリーが出来上がる。
花宮と仲良くなるなんて考えたくもないけれどさ。


「…傘、入れてやろうか。」

「え、マジ!?」

「嘘だよ、バァカ。」

何だよ!と言おうとした瞬間、花宮は雨に向かって走り出していて残されたのはわたしだけ。
あきらめてわたしも走って帰ろうと思ったら靴箱に一本のビニール傘がかかっている。

そういえば花宮は自分の傘があるはずなのに走って帰ったことを思い出す。

「バァカはそっちじゃないの、」

そしてわたしは花宮の傘を差して彼を追いかけた。



「さっき傘拾ったんだけど、入れてあげようか?」
「…バッカじゃねぇの。」


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