「あー!悪ぃ侑士、ボール拾うの手伝ってくれ!」
「…仕方あらへんなぁ。」
たまたまテニス部の前を通りかかったところ、盛大にボールをぶちまけているテニス部員。忍足くんと岳人だ。
コートの周りから少し離れたわたしのところまで転がってきた。 あーあ、大変だ。
このまま通りすぎるのもちょっと気の毒だと思い、自分のところまで転がってきたボールを手に取る。
二人のところまで転がしておけば気が付くよね。
ボールを投げるために鞄を下ろす。すると、忍足くんと目が合った。
「おおきに、拾ってくれたんやな。」
わたしに気付き、わざわざ受け取りに来てくれた忍足くん。 初めて近くで見たけれどモテる理由がよく分かる。すごくかっこいい。
男にしては長い髪の毛は色っぽくて、身長も思っていたよりも高い。いつもジャージで見えない腕や足は細そうにみえて以外とがっしりしている。
魅力的な人だと思うよ、うん。 わたしは見るだけで充分ですけどね。
「たまたまここまで転がってきただけだから。はい、ボール。」
自分より大きい忍足くんの手にテニスボールを握らせる。 けれど忍足くんは受け取らないでボールは重力に従いに地面に戻り、かわりにわたしの手を握った。
「ほんま、おおきに。」
心なしか忍足くんの手は熱く、頬は染まっているように見えた。
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