…どうしよう。
リョーガは多分アメリカにいると思うけれど、とりあえず実家の方に連絡取ってみようかな。
何か知っている可能性をかけて日が傾き始めた今、連絡をとってみることにした。

滅多にかけない彼の実家の番号。
かかってくることは時々あるけれど。


『…もしもし。』

「はい、越前ですけど。」

『あ、リョーマくんかな?ゆかりなんだけど。』

「お久しぶりっす。」

リョーガが出てくれないかな、という淡い期待をは脆く崩れ、弟のリョーマくんが電話に出た。
兄弟なのに彼にはあまり似てない高めの声。

『リョーガそっちに行ってたりしないかな…?』

「こっちには来てないっすけど…どうかしたんですか?」

『…に、妊娠しちゃってさ。』

あんまり真剣に言うと重く聞こえると思って、少し砕けて言ってみた。けれどすぐに後悔した。

…返事が返ってこない。
思い沈黙が続く、言わない方が良かったなぁ。
わたしが謝ろうとするより先にリョーマくんが口を開いた。


「今からそっち、行きます。」

ブツッと電話が切れた。
びっくりしたけれど、一人になりたくなかったから少し安心した。


***

思っていたよりも早くリョーマくんは来てくれた。

「お邪魔します。」

『どうぞ、急にごめんね。』

久しぶりに会ったリョーマくんは、少し前のリョーガにそっくりで時間が遡ったのかと思った。
そんなことあるはずないんだけどね。

お互い特に話すわけでもなく、わたしは彼が好きだと言っていたファンタをコンビニで買ってくると言うと、俺も行きますとついてきてくれる。優しい子だなぁ。

ついでに夕御飯の材料も買おうと少し離れたスーパーまで行くことにした。


『何か食べたいものとかある?』

「和食とか…。」

『たしか焼き魚好きだったよね、お魚焼こうか。』

茶碗蒸しは作れないけれど、一人暮らしをしているから魚を焼くくらいなら問題ない。

お魚とファンタ、それとリョーマくんが食べたいと言ったお菓子。
自然にかごを持ってくれて、会計までしてくれた。当たり前のように荷物も持ってくれる。

『わたしも食べるんだから、気にしなくていいのに。』

「俺だってもう社会人っすから、これくらいさせてください。」

美南ちゃんが好きになる訳だよなぁ、わたしも惚れちゃいそう。
リョーマくんみたいな人が彼氏だったら今頃わたしも幸せだったかな、なんて思う。


それでも、わたしはリョーガと幸せになりたい。

リョーマくんが来てくれたのに、余計に寂しく感じた夜だった。




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