手術の次の日。 目が見えるようになっているはずのゆかりに会いに行くことにした。
日に日に暑くなっていく。今日は真夏日ではおさまらず、猛暑日となった。夏はまだまだこれからなのに。セミは相変わらず叫んでいる。 病院に行く前にまずは部活だ。 こんなに暑くても部活はやるなんてな、ありえへんわ。部活動が中止になる原因になかったか?
まずこんな気温で練習に身が入る訳がない。 そんで俺はこんな状況。小春にも相手のダブルスにも迷惑をかけてしもた。
「ユウくん、大丈夫なん?顔色もあんまり良くあらへんけど…」
「…小春すまんな。ちょっと頭冷やしてくるわ。」
そう言って水道に向かう。 蛇口から思いっきり水を出して、滝のようになった水道へ頭を突っ込む。気持ちええ。 ウジウジ悩んでたって仕方あらへん。
今日はもう当たって砕けるんや!そう決めた。
コートに戻るとき白石とすれ違った。
「なぁ白石。今日、行くわ。」
「おん、盛大に振られて来い!」
***
病室のドアの前。 ドアに触れる手はじんわりと汗をかいて触れるか触れないかあたりのところで震えていた。
あいつの目が見えるようになっていたら全部話す。見えていなかったら…今日は白石でやり過ごす。 ずるい考え方というのは分かっとる。
でも、どうせ話さないかんのやったらその時は俺を見てもらいたい。
手汗をズボンでぬぐい、深呼吸。ドアに手をかける。
無言で開けた扉の先には、目に包帯を巻いているゆかり。 …手術は、成功したんやろか。
「ゆかり、失礼するで。」
声が震えそうになるのを必死で抑えて白石を作りあげる。 初めてなりすました時も本当に白石になれていたか、という不安があった。 それと、痛む俺の心。
「数日振りやな。せや、手術はどうやった?」
顔はこちらに向けてくれたけれど返事がない。 …まさか、手術は失敗したのだろうか。
もう一度、聞こうとしたときにゆかりの口は開いた。
『…なぁ、ユウジなんやろ?』
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