“好きや” その三文字を伝えたい。
「あ、あんな…」
めっちゃ心臓バクバク言っとる。 ああもう爆発しそうや!
『どしたん、一氏くん?』
「あっ、あんな!」
『おん。』
「すっ!…すっ、すす」
どもんな!あかん! 落ち着け俺!
小春には言えるやないか。 たった二文字、関西弁で三文字!好っきやねんだったら六文字や! 目の前にいるのが小春だと思え、思い込め俺!
「すぅ…す!すす、」
『す?』
小春に見えるわけないやろ!
無理や、言えへん!
「すっ、スピードスターのモノマネしてもええか!!?」
なんでやねん!!!
なんで謙也のマネせなあかんねん! 他にもっとあったやろ俺!
『謙也?じゃあうちが似てるか審判したるわ!』
せ、せめて… 勇気を出せ俺!一氏ユウジ男や!
「…なぁ、お、俺のこと呼び捨てで呼んでくれへん?」
『ん?』
「あ、いや、深い意味とかなくて…せや!俺大体名前呼び捨てやから名字はむず痒いねん!」
『おん、分かったで!ユウジ!』
たった一言で頭がクラクラする。 これはもう重症やな、俺。 『なあユウジ、謙也のモノマネ見してくれへんの?』
「俺が浪速のスピードスターっちゅー話や!…どや?」
『おおお!すっごい似てるわ!って言っても、わたしいつもお笑いライブ見てたから知ってるんやけどな!』
「マジで!?」
知らへんかった。 …見に来てくれとったんか。なんか嬉し恥ずかしいわ。
『うち、1年の頃からずっとユウジの大ファンやねん!』
…俺、今日死んでええわ。
なんやねんマジ! 一生分の幸せここで使いきってまうんか!?それでも幸せや!!
照れて「お、おう。」って素っ気ない返事しかできへんかったわ。
『小春ちゃんにライブ誘われてな、見に行ったらユウジがめっちゃ面白かってん!』
「せやったんか!」
小春グッジョブ…。 俺は最高の相方を持ったわ。
そんなこんなで話し込んでいたら外はもう暗くなっていた。時計を見ると面会時間まであと少し。 予想異常に長居してしまった。
「今日は楽しかったわ!」
『うちもやで!ユウジと仲良くなれてほんま良かった。』
それはこっちのセリフや! よ、よしせやったらこのノリで然り気なぁーく聞いたる!
「なぁ、…また明日もきてええか?」
『ええで!ユウジなら大歓迎や!でもか大丈夫なん?時間とか、彼女とか気にせぇへん?』
「俺、ゆかりのことが好きやねん。だから彼女おらへ…ん?」
しまったあああああああ!! さらーっと言ってしもた!
そして俺は叫びながら逃げるように病室を後にした。 看護婦さんにはもちろん怒られたが気にする余裕なんか俺にはあらへんかった。
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