今日は雨や。ちゅうことは部活が早く終わるから早く会いに行ける。
いつもやったら憂鬱な雨が今日は嬉しいわ。

最初にゆかりに会ってから三日目。
白石のふりをしてから二日目。


「ユウくん、あれからゆかりちゃんのところお見舞いに行った?」

「…いや、行っとらん。」

なんとなく小春には隠してしまった。
けれど勘の良い小春のことやから遅かれ早かれバレるやろ。

「あたしまだお見舞いに行けてへんから今日一緒に行かへん?」

「…おん、行くで。」

どうせ今日も行くつもりやったし。一氏ユウジで行くか白石蔵ノ介で行くかの違いや。

小春と仲良かったんなら、俺がまた行ってもおかしないやろ。
一人で行ったらまた彼氏や言われそうやし、いや俺は構へんのやけど。

ゆかりにイヤや言われたらショックで俺まで入院してまうわ。

それに先生に頼まれて一回プリント持っていっただけの関係。
…考えてまうやん。思春期まっさかりやし。好きやっちゅうこと知られたらどないしよ、とか。
もし、しつこい思われたら入院どころかお葬式やで。


二度目に白石のふりして行ったんは、ゆかりを元気付けるためや言うて結局は自分があいつんとこ行く理由付けやったんや。


「おいユウジ、小春!」

眩しい金髪やな、この不良が。
息切らしてミーティング室に来たんは頭までお星さまのスピードスター忍足謙也や。

「あら、謙也クン!」

「俺と小春の時間を邪魔すなや!」

「今日ミーティングあらへんて!白石から来る途中に連絡着たわ。」

「は?他のやつらどないしてん。」

まだ来てないやつらもおるし…っちゅうか俺と小春と謙也しかおらんかったわ。

「電波障害起きとったらしいで。それでも俺が途中で連絡ついたから良かったわ。」

「せやったんか。じゃあうちらは帰るけど謙也クンはどうするん?」

「せっかくや自主練してから帰る。白石も今から来る言うてたし。」

責任感じてるんやろな、ケータイ会社の不具合なんに。今まで当たり前に受け取っとたけどやっぱり白石はええ奴やな。謙也も途中で帰れば良かったんに、他のやつのためにわざわざ走ってきてくれて。


小春以外に想うやつがはじめてできたばかりやから、今まで考えてこなかった。無意識で意識するっちゅうんか?
何かあったら反射的にそれならあいつはどうや?って考える。

繋がりがあるから、心配とかすんのやろな。
先生に頼まれへんかったら繋がりはなかったんやから。恥ずかしいけれど感謝しとるわ。

そして人を本気で好きになることで、仲間の良いところや大切さとかよく見えるようになった気がする。

恋をすると大人になるって、ほんまやったんやな。





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