「ねぇ、ゆかりちゃん。千石くんと付き合ってるって本当?」
「やめておいた方がいいって!」
「いいなぁ、私も遊びでいいから千石くんと付き合いたい〜」
「もしかしてゆかりが千石くんを遊んじゃってるとか?」

一夜明けるだけでこんなにも噂は広がるものなのか、恐ろしい。噂の出所を聞いたところ「ん?千石くんから。」ぶっとばすぞ。

賛否両論あるけれどわたしは否に賛成。


いや、当の本人が何なんだよってね。
そりゃそうだ。
じゃんけんで付き合うことになりました、なんて誰にも言えない。(もしかしたらあいつが言ってるかもしれないけど。)

あとこれ以上変な目立ちかたをしたくない。目線が痛いんだ。
次会ったときに、やっぱり付き合えないって言おう。


「ゆかりちゃんいるー?」

「あ、噂の千石くんだ。」


..次は、予想以上に速く訪れた。
隠れようと思ったけれど、せまいし机と椅子くらいしかない教室。隠れるところなんてない。
これはもう、しらばっくれるしかない。


(いないって言って!)

千石くんの相手をしている子(わたしの友だち)に目配せをする。長年の付き合いだ。アイコンタクトで会話ができる(はず)。が、
「あそこにいるよー。」

『ちくしょう!』


友だちを売りやがった!

ニヤニヤしやがって!



つかつかつか、と千石はわたしのもとへ歩いてくる。
い、今言うのか。ちょっと急じゃないか。落ち着け落ち着け。「ちょっと話があるんだけど。」それだけ言えばいいんだ。
しかし私が口を開くより千石の方が速く口を開いた。

「今日、一緒にお昼食べない?」

『あー、ごめん。友だちと食べるし..』

「食べな食べな!あたし今日他の子と食べてくるから遠慮はいらない。」


遠慮なんてしてないよ、ばか!

「じゃあ、昼休み屋上でね。」

『..うん。』


うんじゃないよ、断れよ!
自分もばか!






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