なんとなくやけど、自分がしていることを白石に言わなきゃいけへんと思った。
「…自分、何しとるんか分かっとるんやろな?」
「おん、分かっとる」
そう言ったら一発殴られた。 自分が良くないことをしとるって分かってるから、誰かに叱ってほしかっただけ。 多分そうなんやと思う。
「その特技はそういう人を騙すために使うもんやないやろ…!」
テニスで勝つため、笑かすため。 そのために磨いてきた声のモノマネ。
あの時もっと冷静やったら、…俺がゆかりに惚れへんかったらこないなことせえへんかったのに。
白石の声で初めて見舞いに行ったのは一昨日。 昨日もそうやって会った。
「今、バラすのはゆかりさんには良くないことなんやろ?」
どんな手術かは知らへん。 けれどドラマとかで見る限り余計な不安とかショックとか与へんほうがええことくらい分かる。
「だから、手術が終わって目が見えるようになったら謝りに行く。」
「…見えへんままやったら?」
「あいつの前で一生白石でおる。」
「アホか!」
また殴られた。 最近白石は荒れとるんか?
「それはゆかりさんにも悪いことやしお前にも悪いことや。そんなん、絶対辛いに決まっとるやんか…!」
「しら、いし…。」
騙してることはもちろん辛い。 心が痛くなる。 けれどゆかりのためやから、そうやって会いに行ってた。 あいつに会えるんやったら、元気が出るんやったら俺も幸せや。そう思っとった。
けれど幸せになんかなれそうもない。 こうしている以上、目の前に俺がおってもゆかりは“俺”をみてくれないんやから。
「ほんまに好きなんやったら彼女の結果がどうであっても、お前は大人しく当たって砕けてこいや。」
俺は、本当に良い友だちを持ったわ。
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