次の日、俺はまたゆかりんところへ行った。行く約束はしてへんけど気にせえへん。

ただ、俺が行くんやけど俺が行くわけやない。


小春があいつが白石のこと好きだった言うてたから、元気付けられるんはこいつなんかなって。

『香川さん、久しぶりやな。』

「…ほんと久しぶり、だね。」


昨日より、元気あらへん。

俺が力になってやりたい。
けれど昨日話したことがあるだけで他に関わりはない。
白石本人を誘えば良いんやけど、会わせたくなかった。目の前で二人が仲良さそうにしてたら俺がショック受けるから。

応援したいんやけど力になれるんは俺やないって、ほんま辛いわ。


「先生から聞いたわ、ほんまに災難やったな。」

『仕方あらへんよ、ぶつかるなんてしょっちゅうあるスポーツやからな。誰も悪くあらへん。』

「俺だったら、相手のせいにしてまうかもしれへんわ。」

『らしくないで?ていうかテニスで相手とぶつかることなんかそうそうないやろ。』

「ま、せやな。そういやバスケ部な、お前が帰ってきた時に負けて大会終わってる訳にはいかへんってほんまに頑張っとるで?」

時計の針が一回りとちょっと。
ほんまはまだまだ話していたいけど、励ますためとはいえ騙してるのは心が痛い。


「今日はそろそろ帰るわ。」

『ありがとうな、うちのために時間割いてくれて。』

「手術まであと6日やろ?来れるときは来るから、頑張りや。」

そう言い残して帰った。



上手く白石になれてたやろか。

あいつが無事に手術受けて目が見えるようになるんやったら、俺は何したってええ。
自分の目を捧げたっていい。


出会ってたった2日。
こんな短い期間で自分はここまで他人を好きになれたのか。

一目惚れやった。
…恋っちゅうか、愛しとる。

きっと前世から俺はゆかりに惚れとったんや。そんなクサイこと思ったんは初めてや。



手術が終わったら、謝る。

それまでは俺があいつの白石。あいつの王子様。
騙していたことを告白したら、一変して従者どころか悪魔やな。
素敵な素敵な、白石クンの皮を被った偽王子。



あぁ。もしあいつの目が一生見えへんままやったら俺がそばにいれるんやけどな。

はは、厨二臭いわ。





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