わたしは新卒。
今年から立海大付属中学校で教師を勤めることになった。

テニスが強いことで有名らしい。わたしにはよく分からないけれどそんなところで働かせてもらえるんだから精一杯頑張らないと!

そして、1年目で初担任。めちゃくちゃ緊張するけれど、きっと何とかなる!
生徒に好かれる、良い先生になりたいな!


「それでは、担任の発表へ移る。」

ざわざわと急に騒ぎ始める生徒。
1年間を共に過ごす先生になるのだから重大発表だ。わたしもつい数年前までドキドキを感じていた。

順々に発表され、その度に歓声やため息が体育館に溢れる。
人気があるのは大体おじいちゃん先生。女の子には若い男の先生で、男の子には若い女の先生。
きっとこれはどこも共通だろう。


「2年D組、香川ゆかり先生。」

『はい!』

名前を呼ばれて2年D組の前に立つ。
自分が持つ初めての生徒たち、あぁはやくこの子たちの名前を覚えて呼びたい!愛しくてたまらない。

『よろしくお願いします!』

深々と頭を下げる。
その時ガタッという音が聞こえ頭を下げた姿勢のまま顔だけあげる。
そこには立っている一人の生徒。

「…めっちゃタイプ!」

『…は?』

「赤也ァ!貴様何をやっとるか!!」

「す、すんません真田副部長!」

始業式が笑いに包まれる。あぁ、恥ずかしかった。
…赤也くんか、一番に名前覚えちゃったよ。

始業式は続いて他の先生方も名前を呼ばれていく。
その間、ずっと熱い視線を感じる。あの"赤也くん"から。
そういえばわたしのことタイプって言ったね、…タイプ!?

この視線は好意によるものだったのか…。
まぁいいか。
中学生、まだまだ若いもの。
年の近い先生には憧れちゃうよね、わたしも川越先生に初恋を捧げたわ。
そのうちクラスの女子に視線が移るだろうから気にしない。


「俺、本気っすから!ゆかり先生!」

終わった途端にわたしのところへ駆け寄る赤也くん。…可愛いけどね、すごく可愛いんだけどね。一時の気の迷いだからね。
それ以前に先生と生徒だし。

けれどキラキラした子犬のような瞳で見つめられると、ちょっと断りづらい。
本当に可愛いんだって!可愛いもの好きだから!

赤也くんは今中学2年生だから卒業までにあと2年。
高校卒業まではあと5年か…。

「ゆかり先生、好きっす!付き合ってください!」

『…ご、5年待ってあげるから高校卒業してきて。』

「マジっすか!じゃあ俺が卒業するまでゆかり先生結婚しちゃダメっすよ!」


やりい!と駆けていく赤也くんはやっぱり可愛かった。


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