真新しい制服、買ったばかりのローファーに憧れだったスクールバッグ。

今日から青学の1年生。


入学試験の時は不安でいっぱいだったけれど、今は期待に満ち溢れている。
意気揚々と入学式が行われる体育館へ向かう。おそらくこっちの方が近道な気がする。人の流れに乗らず我が道を行った。

そして、わたしが辿り着いたのはテニスコート。

『あれぇ…。』

そこには当たり前だが誰もいない。
勘だけで来たのがいけなかった、大人しく流れにのっておけば良かったなぁ。いらない冒険心が邪魔をしてしまった。


「ねぇ、アンタ何してるの。」

後ろから急に声をかけられてビクッと肩を揺らす。
振り返ってみると背がわたしと同じくらい、それか少しばかり低いくらいの男の子。

…この子も迷子なのかな。


『あの、迷っちゃって。』

「…着いてきて、案内してあげる。」

ありがとう、お礼を言おうとしたがその前にスタスタと少年は行ってしまった。
置いていかれないように急いでわたしもついていく。

1年生だよね?迷わずスタスタと歩くのでびっくりした。
こんなに広い校舎、卒業までに覚えられるかな。…無理そう。
ろくに見学もしないで受験したのがいけなかったよね。こんなに広いって分かってたらやめておいた!
受験の時は集団行動だから迷わなかったけど今後が不安すぎる。


「…着いた。」

目の前には見覚えのある体育館。
入学式会場という看板、間違いない。

『あっありがとうございます!』

「別に、たまたまサボってたらアンタが来ただけだったし。」

『入学式をサボるの!?』

いっいきなり先生に目、付けられちゃうじゃんか!勇気のある子だ。
わたしには想像もつかない複雑な事情とかあるのかな。

「ていうか俺、入学式出ないし。」

じ、自分は入学式出る価値もないってこと!?
小学校の頃いじめられてたりとかしたのかな、小さいからいじられすぎて学校嫌になっちゃったとか!それとも親に色々言われてるのかな、お前なんか生きる価値もない!とか言われてるのかな!


『そ、そんなことないよ!君は価値ある人だよ!』

「…アンタ、面白いね。」


そしてまた少年はどこかへ歩いて行ってしまった。
入学式、いいのかな。



***

テニス部で再会してひたすら謝るのは別のお話。


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