社会人一年目。この就職難をなんとか乗り越えて職業につくことができた。


初めて会社員として職場に行き、まだまだ不安が残りながらも入社式を終えた。

それにしても派手な人がいたなぁ。オレンジ色の髪の毛でよく面接通ったよね、アパレル関係の会社だから良いのかな。
うん、おしゃれそうな人だったし良かったのかもしれない。


「ねぇねぇ、君!新入社員の子だよね?こんな可愛い子と同じ会社なんて本当に俺ってラッキー!」

目の前にいるのは先ほど気になったあのオレンジ。そうそうこの人だ。

「あれ、聞こえてない?はじめまして俺千石清純って言います!これからよろしくね!」

さわやかに微笑む彼は、見た目もだいぶチャラそうだけど中身もチャラそうだなぁ。
わたしチャラチャラした人あんまり好きじゃないんだよね。ありきたりだけど優しくて一途な人が素敵。


「ねえちょっと!…俺の声聞こえてないのかな。」

『あ、うんごめん。聞こえてる。』

「それなら返事してよ!」

少し拗ねたように口を尖らせる。
笑ったり怒ったり忙しい人だなぁ、他の顔も見てみたい。


「人の顔ジロジロ見ちゃって何?あっ俺に恋しちゃったとか!?」

『あ、それはないです。』

「バッサリ切り捨てるね…。」

下手な泣き真似をしながらその場に膝をつく彼。
ここ人通りは多くないけど会社の通路だから恥ずかしいんだけどなぁ。
でも嫌な気持ちはない。

そんな彼にわたしは手を伸ばす。


『でも興味は持ちました。わたしとお友だちになってくれないかな?』

「それは友だちからお願いしますって意味かな!」

『友だちのままでお願いしますという意味で受け取って下さい。』

わたしの言葉に一喜一憂する可愛いオレンジ頭。こうして無事に職場で友だちを作ることができた。

(…ずっとわたしだけを見てくれればいいのに。)

今まで持ったことがないこの感情。それが恋だと気付くまでもう少し。




「ゆかりちゃん彼氏いるの?」
『好きになっちゃった人はいるよ。』
「もしかして、俺?なーんて…」
『そうだよ。』
「嘘!」
『予想外の恋でした…』
「なんかひどい!」


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