返事はまだ、いらへんから。 そう言い残して白石くんは部活に行ってしまった。
一人その場に立ち尽くす。
もう少し早かったら良かったのに。 わたしと千歳が出会う前に好きって言ってくれれば良かったのに。
「ゆかり、どぎゃんしたと?」
『…何でもない。』
「少し待ってなっせ!」
部活はいつの間にか始まっていた。 人を誘っておいて今さら来るなんてさすが千歳千里。それでも好きになってしまった。
こんな性格悪いダメ男より、完璧で優しい白石くんのほうがよっぽど素敵なのに、何故かこいつといる方が安心する。
…無理、してたからかな。
好かれるために自分作り替えてそれで幸せだったなんて。 ばっかみたい。
「ゆかり!」
バサッと肩にかけられる黄色と緑のジャージ。
「それ、着てなっせ。」
わたしにジャージかけたらあんたが寒いじゃん。そう言って返そうとしたらもう一枚あるとまた押し返された。
『…さっき、白石に告白された。』
どうすればいいかな? そう彼に問う。
「俺には関係なか。」
『…千歳くんひっどーい。』
そうだ、関係ない。 ただ付き合ってほしくない、自分から離れてほしくない。そう言ってほしかった。
けれどわたしは彼からそんな言葉をもらえる地位にいない。 千歳と付き合いたい、千歳から離れたくない。わたしのわがままだ。
「ばってん、ゆかりには幸せになってもらいたか。好いとうやつが幸せになるんは男の幸せたい。」
『…え?』
「それにずっと白石ば好きだったんなら、お前さんの気持ちはとっくに決まっとるんじゃなか?」
『…さっ、さっきなんて!』
「それは聞き逃してよか。」
『よ、よくない!』
どうしても顔がにやけてしまう。 とりあえず勘違いを解く、というかわたしの好きな人情報を新しくしてもらわないといけない。
「白石のこつ好きなんじゃろ?」
『いっ今好きなのは白石のことじゃなくって、』
千歳のことだから!
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