『おはようさん財前くん!今日もかっこええな、素敵やで!』

「…はぁ。」


最近変な人に付きまとわれている。
本人曰く一目惚れらしいがそんなの知ったこっちゃない。迷惑や。
面と向かってそう言っても聞かへんから対処に困っとる。


『一緒に行ってもええかな?』

嫌言うてもどうせついてくるくせに。
俺が無言で歩き出したのを肯定と受け取ったのか少し後ろをついてきた。

普通なら無言は否定やろ!

『なあなあ!今日、一緒にお昼食べてもええ?』

いつも勝手に食いに来よるやろ!


…朝からこないな奴構ってたら疲れてまうわ。もうほっとこ。
そうして俺は学校へ行く足を早めることにした。



学校についてあの人は3年の階へ。やっとうるさいのから解放されるわ。

短い午前の授業4つ分だけ。そんな時間はあっちゅう間に過ぎてもうた。
…いつもやったらすっ飛んでくるゆかりさんが来ない。

それならそれで、他のやつとさっさと飯食えばええんやけどなんとなくそんな気にはなれへんくて。
1分、3分、5分と時間は経つ。
どこぞのスピードスターやあらへんけど昼休みは限られとる。このま待ってたら食いそびれてまうわ。
今さらどっかのグループに入るんもアレやし先輩らんとこも行きづらいし、屋上行くかな。

ギィッと立て付けの悪いドアに手をかける。


「あんな後輩やめといて俺にせぇ言うとるやろ!ゆかり!」

『嫌や言うてるやないかアホ!勝手に名前呼ぶんもやめろや!財前くんにも名字呼びされとるんやで!?』

「知らんわ!」

…やかましい。
すぐにまたドアを閉めようと思ったけど自分の名前が聞こえて腕を止める。

「ほんまに好きなんやて!」

『ちょっ、離せや!』


「チッ」

気が付けば舌打ちをしていて、ドアを蹴り飛ばしていた。立て付け悪いんやからちょうどええくらいやろ。

「なぁ、アンタ。誰の女に手ぇ出しとるんか分かってます?」


無理やり男の腕から奪い取って自分の胸に引き寄せる。
驚いて目ん玉パチクリさせた後、嬉しそうに顔をほころばせて笑う姿は憎たらしかった。

それでも、認めたくあらへんけど
あんたのことが好きになってたみたいやわ!


title/確かに恋だった


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