『ごめん財前!』
「別にええですよ。」
『…いや、絶対まだ怒ってる!』
きっかけはいつも些細なこと。
今日は放課後の委員会を忘れとって、俺が待ちぼうけ1時間を食らった。
俺はほんまに気にしてへんのにこの人は「まだ怒ってる!」とか「今、機嫌悪いでしょ」とかよく分からんことを言いはる。
そんなに俺を怒らせたいんか?
でもこの人は俺がホンマに怒ってないことを知ってやっとるからなおさら意味が分からん。
…それをかわええな、と思ってまう俺は相当キてるみたいや。 調子乗るから絶対言ってやらんけど。
この人相当アホやし鈍いから、軽いナンパの誉め言葉も真に受けてついていきそうやし、下心丸見えのやつに気付かんで寄っていきそうやし、目が離せへん。
『…財前、本当に怒った?』
考え事しとったら知らん間に無表情になっとったみたいや。 いつもならここで「怒ってないです」言うのやけど今日はちょっと意地悪してみる。
「…。」
シカト。 案の定焦りはじめるゆかりさん。 『あ、あの、財前…。』
ほんま可愛らしい。 部長にも謙也さんにも誰にも譲る気はあらへん。 なんでゆかりさんは生まれるのはやかったん。なんで俺は遅かったん?
たった1つの年の差が、時に大きな不安となる。
『…よし、財前!』
「なんすか。」
『ぜんざい食べにいこう、おごってあげるから!』
俺のこと食いもんでつれると思うてんのか? …バカにしとるやろ。
「ま、しゃーないっすわ。」
決して食いもの(せんざい)につられたわけやあらへんで。 部長たちには見せへん、後輩で恋人である俺にだけ見せる顔。金太郎とは違う甘やかし方。
そんなゆかりさんがあまりにも可愛かったから折れてやったんや。
title/確かに恋だった
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