『あれ。』
探していた人物は思っていたよりも早く見つかった。
きれいなミルクティー色に染まった頭を抱え込み下駄箱に座り込んでいる白石くん。あーとかうーとかぼそぼそと独りで呟いている。
…お腹でも痛いのかな。
自分の方に背を向けている白石くんはわたしに気付く気配もない。 少しずつ近付いてみてるけれど、それでも気付きそうにない。さっきまではよく聞こえなかった声が若干聞き取れる。
あーやばい、マジでやばい。 ほんまどないしよ。
そう聞こえた気がした。
『白石くん、どうしたの?』
「っ!ゆかりさん、か…。」
『すっごい顔真っ赤だよ!熱あるんじゃない?』
「心配あらへんよ、ちょっと目眩しだけやから。」
ちょっとごめんね、と話しかけたときはねあげた白石くんの顔に手を寄せる。 男の人には長めの前髪、サラサラできれいなそれを払って彼の額に触れた。
『んー、ちょっとだけ熱いかな…。』
はやく帰った方がいいよ、と言うために目を合わせたとき、知らずと近付いていた顔の距離と、白石くんの真剣な顔に心臓がドクンと大きく動いた。
『ご、ごめん!』
気付かなかった、そう口を紡いだつもりだったのに実際に音は発せられなかった。
急に両手を握られ、無理やり立たされる。そして抱き締められた。
「…好きや。」
『え』
「返事はまだえぇから。ほな、今度こそまた明日な。」
そう言って走り去ってしまった白石くんを、わたしはただ呆然と見ていることしかできなかった。
あ、シャーペン返せなかった。
顔を真っ赤に染め、シャーペンと共に返す言葉を考えてよりいっそう、赤くなった。
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