「何しとるんすか、先輩。」
ガサガサとチョコの包み紙を開けていたら、現れた西の天才"財前光"。 何してるのはお前のほうだ、今は授業中だぞ。
「めんどくさいんでサボりました。だから先輩は何してはるんすか。」
『…チョコ食べようとしてる。』
「見たら分かります。何で泣いてるんですか。」
質問責めめんどくさい…と思っていたら言われて気付く。自分は泣いていた。 原因ははっきり分かってるけどまさか泣くまでとは思っていなかった。 たしかに傷ついた。けれどだからといってどうなる訳でもない。
『今日、告白しようと思ってた人がいたんだけど、』
「はい。」
『その人には付き合ってる人がいて、渡せないまま終わっちゃった。』
だから行き場のないチョコを自分で処理しようとしていますって答えると、チョコを取り上げられた。 一応手作りで何回も練習したのに、その意味も最初からなかったんだ。 もっと悲しくなってポロポロと涙が零れる。
「…これ、俺が食ってもええですか。」
財前がわたしに聞いたけど、答えを聞かずにもう食べ始めてる。 相変わらずだなぁって思うけれど、今は財前のこんな態度に不思議と安心する。
『美味しい…?』
「ゆかり先輩が作ったもの、不味い訳ないです。」
何で財前はこういうときだけ、こんなに優しいんだろう。 いつもだったらボロクソ貶して「仕方ないから食ったりますわ」とか言うのに。あれ、でも財前はなんだかんだ最後には優しかったよな。 この優しさが自分にだけ向けられてればいいのに、と思うのは恋なのか。
失恋直後にまた恋だなんて軽い女だと思われるだろうか。
そういえば、自分が辛いとき財前はいつも傍にいてくれた。 大きな失敗をしたとき、大会で負けたとき、友達とケンカしたとき、話を聞いて慰めてくれたのはいつも財前だった。
だからこそ、もう甘えてるだけじゃいけないんだ。 ほんとはずっと財前のこと、好きだったんだろうな。
『…ごめんね。財前、いつもいっつも。』
「俺が聞きたいのはごめんやない。」
『でも、ごめん。きっと財前のことがずっと好きでした。』
「気付くのが遅いんですよ。ほんまトロいっすわ。…ゆかりさん、俺もです。」
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