そうだよ噂の人気者忍足謙也!
あぁ、すっきりした。
今ならなんとなく記録が上がりそうな気がするけど、今さら部活にいくのもなぁ。
しょうがない、帰るか。 立ち上がって制服についた砂を払う。あ、腕擦りむいてた。
『それじゃ!』
「それじゃ、やないわアホ!血ぃ出とるやん保健室行くで保健室!」
やかましい人だ。世間ではこんな人がモテるのか。別にかっこよく…うーん悪くはないと思うけどこれがイケメンなのか。
やっぱりよく分からない。
抵抗せずあれやこれや考えてる間にずるずると保健室へ引きずりこまれていた。
「しみるで?」
保健室の先生がいなくて、忍足謙也に手当てしてもらう。ちょっと不安(だって金髪だし)でそれが思いっきり顔に出てたのか「俺、医者のせがれやねん。」って説明された。それなら安心だ。
頭の色に似つかわしくないその丁寧な手つきで、なんとなく忍足謙也が好かれてる理由が分かった気がする。
「俺な、さっき嘘ついてん。」
『…不良なんですか。』
「そこやない…実は、お前のこと知っとった。」
なんだそっちか。 人目のいないここに来たところでボコされんのかと思った。腰引けたし。
ていうかわたしは忍足謙也のこと知らなかったのに忍足謙也はわたしのこと知ってるって、多分普通は逆なんだろね。
「ちゅうかさ、1年の頃俺ら同じクラスやんけ!」
『え、嘘。』
まったく記憶にない。 朝は朝練だし昼も昼練だし放課後部活で部活の後はナイターだし。ついでにいうと授業中と10分休みは寝てた。部活のために体力温存してたわ。
「中学なって一番最初の体力テストの50メートル走、自分に負けてん。」
覚えてない、2年前の体力テストなんざ記憶に残るわけがない。
「俺今までそういうの1番しか取ったことあらへんくて、めっちゃ悔しかった。」
『…はぁ』
勝手にライバル意識されてたのか。 気付かなかった。
…手当てはすでに終わっているのに彼の話はまだ終わらない。 喋りはスピードスターじゃなかった。
「んでむちゃくちゃ走って走って走りまくったら追い付いて、いつのまにか誰よりも速くなったんや!」
ドヤ!と語った忍足謙の顔はこれでもかというほど輝いていた。このひまわりみたいな(頭の意味じゃない)笑い方が女子に好感を持たれるのですね。
勉強になりました。使うか分からないけど。
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