「ねぇ、君って香川ゆかりちゃんであってるかな?」

『はぁ、そうですけど。』


この人はいきなり何だ誰なんだ。

いや、知ってるけど。
テニス部のオレンジ頭、女ったらしで有名な"ラッキー千石"さんこと千石清純。

彼のいい噂はあまり耳にしない。

多分それはむこうも一緒。



「ねぇ、じゃんけんしてくれる?」


最近お決まりのこの言葉、というか絶対に遊ばれている。


『あの、その前に何か言うことありませんか。』

「あ!ごめんごめん。俺と付き合ってくれないかな?」




話は数ヶ月前に遡る。
わたしはとある男子生徒に告白をされた(自慢じゃないからね!)
でもわたしには迷い癖があって、彼のことをよく知らないから断るべきか、それともまずは付き合ってみて彼を知るところから始めるべきか迷った。

迷いに迷った結果、

『わたしにじゃんけんで勝ったら、よろしくお願いします。』



何であの時あんなことを言ってしまったのだろう。

それ以来、わたしのところにはからかい8割本気2割くらいで「じゃんけんしよう」という告白がくるようになってしまったのである。

そして一度も負けたことがないのだ。


最近は告白がついで、わたしが本当に負けないのか確かめにくる奴がほとんどだ。

本当に迷惑な話である。



『じゃんけん、しましょうか。』

よろしくお願いします、突き出された右手と右手。この人左利きっぽい顔なのに右利きなのか、勝手にがっかり。


最初はぐー、じゃんけんぽい。

どうせ今日も勝って
「噂本当だったんだ。」
「あははー強いでしょー。」
「うん、じゃあね。」
で終わるはず。

...はずだったのに!





『え゙』

「おっ、ラッキー!」



わたしの手は拳、グーだ。彼の手は開かれたパー。

...負けた?



「じゃあ今日からよろしくね、ゆかりちゃん!」

嘘でしょ!





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