自分の手にも、千石の手にも大量の紙袋。オープンセールってこともあってついつい手が出てしまった。
「そ、そろそろ休憩しない?」
時計を見ると5時ちょっと過ぎ。 休憩どころかそろそろ帰らないと暗くなってしまう。 けれど今日の帰りはお母さんが迎えに来てくれるから(千石が大層お気に入りらしい)遅くなっても心配ない。
『じゃあ、下の喫茶店行こっか。』
夕ごはんにはまだ早くておやつには遅すぎる。 迷ったけれど、お母さんが来たらご飯食べに行くからドリンクだけにしておいた。
『…結構買ったね。』 4つ椅子があるうちの2つに荷物を降ろす。しかし椅子に収まりきらず床にも置く形になった。
「ゆかりちゃんってあんまり洋服に興味ないかと思ってたから、ビックリしたよ!」 大好きな彼女の荷物持ってるだけで俺は幸せだけどねって、かっこいい。
『…千石と付き合うまではそんなに興味なかったよ。』
あ、今度は可愛い。 照れてる顔と困ってる顔が一番好きかもしれない。
「俺の服も見てもらったし、なんかホントにカップル!って感じだったね。」
自分の服を千石に選んでもらって、わたしも千石の服を選んだ。 いつもはリア充爆発しろとか思ってたのに、いつのまにか爆発を望まれる立場になってる。
「お揃いのマフラー、何人気付いてくれるかな。」
『一緒に学校行けば皆気付くんじゃない?』
「それって遠回しに明日一緒に学校行こうってこと?」
『…そうとも言う。』
二人して顔赤くしながら話して、頼んだメロンソーダがなくなる頃にはお母さんから"もうすぐ着く"ってメールが入ってた。
『よし、そろそろ行こう。』
伝票を持って席を立ったら千石に取り上げられた。しかも自分の荷物もだいぶ減っている。
あんまり見ないけど時々見せる千石の男らしいところ、好き。
「ゆかりちゃん、行くよ?」
『今いく。』
テニスバッグしょって、両手にたくさん紙袋持って、辛いだろうに強がって。あんまり辛くないのかもしれないけど。
千石が持ってくれたお陰で荷物は軽いけど右手がちょっと寂しい。
気が付いたらベタ惚れで、異常が当たり前になったら幸せで。
『左手の持つ。』
「え、大丈夫だよ。ちゃんと鍛えてるからね!」
『手、繋げないじゃん…。』
言ってから予想以上に恥ずかしくて照れ笑い、でもわたしと同じように照れながら微笑む彼を見てこれからの生涯、共に過ごすならやっぱり千石が良いと思った。
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