あ、どうしよう。泣きそう。

今わたしは渡り廊下を歩いていて、ちょうど中庭が見下ろせるところ。たまたま授業変更で移動教室があって、たまたま日直で片付けをしなくちゃいけなくて、たまたまそれが昼休みのことであって、今ここに出くわしてしまった。

中庭に見えるのはわたしの恋人・千石清純と、すごく可愛い女の子。確実に告白現場だ。

別に今までなかったことじゃないけど、直接現場を見るのは初めてだった。
最近なくなったけど、千石が女の子にちょっかいかけることだってあったし。呼び出されることも少なくなかった。
そのたびにわたしは見送って、結果を待ってた。捨てられる不安に押しつぶされそうだった。でも、結局一度も恐れる答えはなかった。


あの子、真っ赤な顔な顔して本気なんだ。
自分のときは全然こんな風じゃなかった、むしろ付き合うつもりなんてなかったし。じゃんけん勝つつもりだったし。

自分みたいなやつが急に千石と付き合って、今まで好きだった子は悔しかったよね。申し訳ないって思う気持ちと、けれどもう別れたくないって気持ち。

でも胸張って「千石の彼女はわたしだから」とは言えない。
本当に千石が自分のこと好きなのか分からないのが一番の理由。
なんか女々しい。女だけど。自分がこんなに弱い人間だったなんて思ってなかったなぁ。


あ、千石がこっち見た。
..ような気がしたけど、多分気のせい。

何か言って、女の子が去っていった。振ったのかな、それともわたしが振られるのかな。
普通なら女の子がいなくなったイコール振られたってなるけど、女の子泣いたりとか悔しそうな顔でもなかったし、ちょっと上機嫌のような気もしたし。

あれ、まさか。


千石から1件のメール。
"今日、放課後に屋上に行こう。"






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