彼に最後に会ったのはいつのことだったっけか。
懐かしいと感じてしまうほど。

『おかえり、リョーガ。』


リョーガはやっぱりアメリカに行っていたみたいで、テニスの大会に出ていたらしい。
そういえばここ最近というか数年、アメリカに行っては帰ってきて理由を聞けば大会だと答えていた。それを考えれば今回も当然そうだよね、と今さらながらに思う。

二人がけのソファーに肩を並べ会、えなかった期間の溝を埋めるように互いのことを聞いた。
わたしはあんまり話すようなことはないんだけど、それでも何か聞きたいというから最近見た映画や読んだ本から今日の朝食とか他愛もないことを話した。

気付けばお腹を撫でている。
いつの間にか癖になっていた、少しずつ大きくなっていくお腹を撫でる癖。
動くわたしの手に合わせてそっとリョーガも撫でてくれる。

「なぁ、こいつ俺の子?」

『普通の女ならきっと他人の子ね。』

数ヶ月、へたすれば1年近く置き去りにされているんだ。
でもわたしは普通の女じゃなくて、1年近く音沙汰のない彼氏を待ち続ける女だから。
浮気相手見つけてさっさと結婚しちゃえば良かったなんて思うこと、なかった訳じゃないけれど。

「お前、覚えてるか?」

『いつのことよ。』

「結婚したいんだろ?」


いつだったかリョーガに言った。結婚したいって。
そしたらあいつは、じゃあ金を貯めなきゃな、働いてないくせに、大会の賞金でどうにかするしかねぇな、それなら頑張って稼いでもらわないとね。
リョーガが色んな大会に出始めたのはそれからだった。わたしのことをほっとく期間が多くなったのもそれから。


「そろそろ結婚できるぜ?」

わたしの左手をとってはめてくれたのはきれいな指輪。

『それじゃ、幸せになろうかな。』


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