お弁当も食べ終わり、短いようで長かった昼休みが終わる。
「じゃあそろそろ教室に帰ろうか。」
『そだねー。』
何だかんだ打ち解けることができて、楽しく過ごせた。話してくれる内容も面白くて聞き上手で。 チャラそうに見える(ていうかチャラい)けれど人気のある理由が分かった気がする。
お弁当を片付けてスカートについた砂ぼこりを払う。立とうとしたら「はい。」って手を貸してくれた。そういうところに女の子はキュンとしてしまうんだ。 屋上を出るときもドアを開けて先に行かせてくれる。紳士的!
(常にこういうところだけ見せていれば、もっとモテるんだろうなぁ。)
こんなエスコートされたら女の子だったらみんな勘違いする。 わたしは千石くんが本気じゃないって分かってくるから騙されない。騙されないけどやっぱりときめくよ、女の子の夢だもん。乙女思考の何が悪い。 でも、そうと分かっていても将来この人の隣に立つ人がうらやましいと思った。
階段を降りて踊り場についたところで箸箱を忘れたことに気付く。 危ない危ない、忘れて帰るところだった。
『ごめん、忘れ物。先帰ってていいよ。』
「いや、待ってる。」
ありがと、小さくつぶやいて階段を急いで駆け上がる。 屋上に戻り、ポツンと寂しく取り残された箸箱を拾い上げまた出口へ向かう。 待たせてるんだから急がないと。それがいけなかった。
『うっ、わあ!』
階段から落ちた。
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