突然のことで頭がパニックになっても時間は当たり前に流れて、一睡もせず朝がきてしまった。
リョーマくんに直接感情を告げられたわけじゃないけれど、いくら鈍感でも自分が養う好きになってくれ、なんて言われたら嫌でも分かる。好意を抱かれていることくらい。 そして浮かんだ美南ちゃんの顔。
いろいろ悩んで眠れず疲れは溜まっていたけれど会社を休むわけにはいかず、美南ちゃんに気まずい感情を抱きながら仕事へ向かう。 言わなければきっと美南ちゃんはこのことを知ることはない。 けれど自分を支えてくれていたあの子を裏切るようで黙っているのは気が進まない。でも傷付けたくはない。
わたしはリョーガに捨てられても、リョーマくんにすがる気はない。
美南ちゃんがいつか素敵な人と幸せになる日がきたら、思い出話にしようかなんて思ったけれどそしたら今が辛すぎる。 やっぱり言おう。
そして昼休み、昨日のカフェに美南ちゃんと来た。
『…昨日のことなんだけれど』
「もしかして、リョーマくんに告白されましたか?」
悲しそうな顔で、美南ちゃんはそう言った。
「わたし、実は知ってたんです。昔、リョーマくんに告白して好きな人がいるって振られて、それがお兄さんの彼女だって知りました。」
泣きそうになるのを堪えながら話す彼女に、わたしが今かけられる言葉が見つからない。
「中学高校社会人ずっと片思いしていた相手の好きな人が会社の先輩で、それを聞いたときゆかりさんがすごく憎かった。」
『…気付かなくて、ごめん。』
「でも、それを知るまでのゆかりさんと一緒にいたことを考えると嫌いになんてなれなくて、でもリョーマくんのことは好きなままで、どうすればいいか分からなくて…」
ついにしゃくりあげてしまった彼女の背中を撫でながら、ごめんとひたすら謝りながら慰める。
「わたしは幸せになれなくても、ゆかりさんにはリョーガさんがいるしリョーマくんだっているから、絶対に幸せになって下さい。」
『リョーマくんと幸せになる気はないんだけどね。』
「…ゆかりさんが羨ましいです。」
そのまま二人して泣いて目を腫らし、会社に戻った時たくさんの人に心配をかけてしまった。
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