最近の趣味というか日課は先輩との電話。勝手に向こうがかけてくるんやけど、気が付いたら毎日のようにしていた。
俺は、先輩のことが好きや。
だから最初にかかってきた時はバカみたいに喜んだ。今ではただ話し相手が欲しいだけなんやろな、なんて思う。
先輩は明るくて、先輩・同い年・後輩関わらず褒めることもキツイことも、隠さずに全て言っていた。 その性格は周りから好かれるばかりやないことを本人は分かっとる。 かわりにこんな自分でも仲間だと思ってくれる人は、本当に良いやつらだって笑っていた。
日付が変わる寸前、窓越しに見る外に太陽なんてあるはずもなく、月と蛍光灯が辺りを照らしとる。
『光、そろそろ寝ようか。』
「はい。それじゃあ、」
電話を切ろうとした時、ふと壁がけのアナログ時計が目に入った。針はちょうど12時を差す。
『うちら、別れようか。』
「は?」
別れるも何も、最初から付き合ってあらへんわ。 と思って気付く、先ほど4月1日エイプリルフールになったんや。
「…ええですよ、そろそろ別れようかと思ってたんすわ。」
可愛い先輩だと思う。 友だちがおらん訳やないけれど、4月1日なんて春休み真っ只中。友だちと嘘を付き合うなんてめったにあらへん。 あっても部活でアホの謙也さんくらいしか騙せへんやろし。 部長や師範は騙されなさそうやし、ホモはこっちが騙されそうやし。
『あはは、光大嫌い。』
「好きやで、ゆかり先輩。」
臆病や、俺は。 嘘か本当か、きわどいところで探りをいれようとする。 こんな日だからこそできる。
『…そういうところ、嫌い。』
「俺は先輩の可愛いところ、大好きなんやけど。」
『それは嘘、本当?』
「本当っすわ。」
俺も先輩も一緒。 臆病で探りあうことしかやらん。 いざとなればまた日付が変わったときに“嘘でした”って言えば良い。
「確かめるために今から先輩の家行ったりましょうか?」
『…来なくていい。』
「待っとってください、すぐに行きます。」
きっとお互いにもう気付いている。
嘘しか言わない先輩と、 本当のことしか言わない俺。
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