それからストラップの子は会うたびにあいさつをしてくれるようになった。
名前は財前光くんというらしい。
光くんは7月20日生まれのA型。好きな食べ物は白玉ぜんざいで得意科目は英語で洋楽をよく聴くらしい。 全部本人が教えてくれた。むしろ覚えさせられた。 「好きになった人に自分のこと知ってもらいたいって思うんは当たり前のことやろ」って言っていた。
廊下で会うとゆかり先輩!って寄ってきてくれて、ところ構わずぎゅうっと抱きついてくる。
最初はもっとクールな印象があったんだけど、低血圧なだけで明るくない訳じゃないらしい。ノリツッコミもこの間してくれた。
1年の金太郎くんとは幼馴染みで何だかんだ世話を焼いている。甥っ子もいるらしく、年下の扱いは慣れているみたいだ。 わたしは甘えられるばかりだから、そんな一面を知ったときはちょっとドキッとした。
光くんは部活以外で初めてできた後輩で、しかもテニス部のイケメン。 今まで話したこともないそんな人が何でクラスでも地味なわたしに好意を抱いてくれるのか、不思議で仕方なかった。
けれど、そのうちそんなことがどうでもよくなるくらいに、わたしの心は光くんに傾いていた。
***
「ゆかり先輩!」
『光くん、どうしたの。』
今日一日の授業が終わり、荷物をまとめていると光くんに呼ばれた。
「今日テニス部オフなんっすわ。ゲーセン行きましょ。」
返事もしないうちに光くんはわたしの鞄を持って行ってしまう。
好きになったことは自覚しているけれど、まだ返事はしていない。
周りからは早く返事をしろと急かされるけれど今さらなんて言えば良いのか分からないんだ。
先に行ってしまった光くんの後を急いで追いかける。 追い付いたら「遅いっすわ」って頭をぐしゃぐしゃに撫でられた。
「何でも好きなもん取ったります。だから今度こそちゃんと付けてくれません?」
『じゃあ、光くんとお揃いでつけられるやつがいいなぁ。』
「え…。」
予想していなかった答えなのか、驚いているみたいだ。
「そしたらカップルみたいっすね。」
『光くんは、わたしみたいな彼女は嫌ですか。』
「…大歓迎に決まっとるやろ!」
その日、はじめてわたしは光くんと手を繋いだ。
「俺もストラップも、今度は誰にもやらんといて下さいね。」
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イヨさん素敵なネタthanx!
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