『わたし自販機行ってくるけどなんか飲みたいものある?』
「カルピス!」
『はいよー、待ってて。』
午前の授業が終わり昼休み。 わたしはジュースを買うために食堂の自動販売機まで走る。 お腹減ったし早く弁当を食べたい、その一心で走った。
廊下にはまだ誰も出ていなく、チャイムが鳴ってすぐに教室を出たからきっと一番乗り!と、思っていたら自販機の前にはもう先客がいた。 ツンツンに立てた頭にごっついピアスの男の子とその仲間たち。うちの学年で見たことがないからきっと後輩だ。 自販機の前なのに何も買う気はないみたいで、楽しそうに話し込んでいた。
…自販機の前でたむろれると邪魔なんだけどなぁ。
早くどかないかな、と視線を送っていたらそのごっついピアスの子がわたしに気づいた。
「なんや、授業終わっとったんか。」
授業に出ていなかったのか、全員チャイムに気付かなかったらしい。
「もう教室帰ろうぜ、腹減った。」
「せやな、飯食おうぜ。」
お仲間たちがぞろぞろと教室へ帰っていく中、ピアスの子だけ自販機の前に残る。 ずっとわたしの方を見ているんだけど口を開くわけでもない。 視線が外れ、入り口の方へ移動し全員が出ていったことを確認してからその子も歩き出した。 そのまますれ違うと思っていたら、わたしの目の前で足を止めた。
「これ、ゲーセンで取ったんすけど」
「は?」
話しかけられると思っていなかったわたしは、急に話しかけられて驚き持っていた財布を落としてしまった。
「大丈夫っすか?」
「あぁ、はい。ありがとう。」
落ちた財布を拾ってくれ、見た目の割りに優しい人だと思った。 そんなことはどうでもいいんだけど。
「ゲーセンでたくさん取ったんで、これ先輩に一個あげますわ。」
手渡されたのは可愛いキャラクターのストラップ。 …たしかに可愛いけれど、面識もない子に渡される意味がわからなくて、わたしは頭にはてなを浮かべる。
その子はわたしの手にそのストラップを握らせ、先にいった子たちを追いかけていった。
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