(ふたりの言葉遊びとサイコ光秀)













「行かないで下さい、行かないで、」


貴方の足元に縋り付き離れない卑しいわたしを嘲笑って(いつか好きだと云ってくれた)長い髪を撫でてくれる指が、そういえばそれを一本動かすだけで幾らでもひとは死んで逝くのだと思い出して身震いするほどに興奮をおぼえて、それを見抜いたような貴方の冷たい冷たい瞳にいつもわたしは堪え切れなくなり嗚咽を漏らすのです。そんなわたしを見ている貴方はとても上機嫌、分かっていますすべて貴方の計略通りと云う事なんて


「浅ましいことよ、人に飼い慣らされて尚生き延びたいと言うか?」


あああ分かっている癖に貴方は冷たい冷たい優しい顔でわたしを見下ろし振り払うのがとても好きで、悲しみに息を詰まらすふりをするわたしに似合いの言葉を吐き捨てるのがお好きなのでしょう、だからわたしはすこしだけ傷付いたように(貴方に付けられる傷なら寧ろ本望)ああっと大袈裟に泣いてみせて、


「貴方の為にはたらいてみせますから、何時もより沢山ころしてきてみせますから、ねえお願いです、私を」
「それは単なる貴様の悪趣味の成果よ、我の元でなくとも出来るではないか」
「ああ違います!違います!貴方の命でなければわたしは何も感じません。貴方の為でなければ、わたしは」
「ならばそうして、我の為に醜く生きよ」


ああそうやって嗤って貴方はわたしから(わたし自らの死)への享楽すら奪って仕舞うのですね非道い御方だほんとうに非道い、髪の先まで慈しんでくれる指先がとても残酷であたたかくて心地良くて、この体温をわたし自身が奪う事が出来たらとひそやかに考えていると、また 貴方が笑うのです。


(貴方に飼い慣らされる歓びが、理性さえも屈服させてしまう。)




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