調教師は、排泄物の溜まったバケツをどかした。
 それから、温めたタオルで、クロロの股間を拭った。
 その手際の良さ。無駄の無さ。
 この男は、始めから、ここで排泄させるつもりだったのだ。
 “準備”をすべて済ませた彼が、下穿きの前盾をくつろげた。あらわになったペニスは、反り勃っていた。
『あんただって、他人の排泄を見て興奮する悪趣味な男なんじゃないか』
 ――と、皮肉の言葉が浮かんだが、口をつぐむ。尻穴でオーガズムを得た自分が言っても、滑稽なだけなのを、クロロは知っていたからだ。媚薬というイイワケも、自身が絶頂を迎えた事実は覆らないのだから、意味がない。
 それにしても……。
 屈強な体躯に相応しい、雄々しい男性器を、グロテスクだとも、おぞましいとも思うのは、女だからなのか。処女だからなのか。
 その大きさ、太さ、長さ、凶悪さを前にして、情けないことに、一瞬、混乱してしまったほどだ。
 男がこれから行わんとしていることは察していた。だからこそ、よけいに、不安になる。こんなモノが本当に、尻の穴に入るのだろうか――と。
 クロロの内心の動揺をよそに、調教師はその凶悪なペニスへ、あの催淫効果のある潤滑油を塗った。
 それから、クロロの肛門の入り口にも改めて、たっぷりと塗りこめた。
 大きな両手で、尻たぶを鷲掴まれる。
 ぬるぬるの切っ先が、アヌスへあてがわれた。その大きな肉傘の熱さと弾力に、処女アヌスが怯えて、キュウゥゥッと窄んだのがわかった。その怯えを無視して、切っ先がめり込み……。
「――……」
 クロロは目を閉じて、唇をひき結んだ。
 ――ズブググググッ!
「……!!」
 身構えていた分、悲鳴を、呻きを、殺すことができた。
 アナルパールや指で丁寧にほぐされていたおかげか、あるいは媚薬の影響か、内側は傷ついていないようだ。引き裂かれる痛みさえなかった。
 ただ、凄まじい拡張感と圧迫感はある。質量は、アナルパールや指の比ではない。
 あらぬ場所を拡げられている緊張が、息苦しさを助長する。
 苦しい。
 苦しいはずなのに、苦しいだけじゃないことに、理性が混乱している。
 腸道をみっちりと満たす硬い肉槍の圧倒的な存在感。灼熱。腹の奥でトクトクと脈打っている。牡肉の熱を、脈動を、腸壁越しに感じている子宮が、ジクジクと疼いていた。
 ――ヌ゛リュゥウウ……ッ!
「ふ、ぅ……ン」
 奥まで入った長い肉槍が、ゆっくりと退いて……。
 ――ジュブグググググッ!
「うクゥッ! ぅう゛ぅ……ッ!」
 再び、奥を穿つ。
 もう、完全に声を殺すことなど、不可能だった。自慰もろくにしたことの無い肉体は、肛門調教を受けるには、あまりにも「うぶ」過ぎたのだ。ペニスに対して、無防備だった。無力だった。幻影旅団の団長だろうが、所詮、身体は生娘のそれなのだ。
「……ッ、ンくぅうッ……ッ、ク、うううぅッ」
 端正な顔は苦悶に歪む。
 ギリギリまで引き抜かれては、奥深く穿たれ。内臓を引きずり出されるのではないか、腹を突き破られるのではないか――牡に犯される牝の恐怖を、クロロは味わっていた。それは、最も純粋で、最も原始的な恐怖の一つだった。
 しかし、同時に……。
 排泄時の開放感を何十倍にも濃縮したような快感が襲ってくる。
 その甘撃は、やがて、人間が本能的な部分で抱く屈辱感や、恐怖心さえ、ことごとく喰い潰していった。
「ぅうっ……ぅあ……ふぅうぅ……ッ」
 呻きに、甘い音色が差し込んできた。
 秘裂からは、白濁汁がとろとろと溢れている。
 濡れている。
 感じている。
「ンッ、ぅっ、ィ、う、はぁう……ッ」
 呻き声は、喘ぎ声に変わっていった。
 喘ぎ声を噛み殺そうにも、ペニスの悦撃に唇が震えてうまくいかない。
 腸壁越しから子宮を狙い打たれて、揺さぶられ、脳髄が痺れる。
 アヌスへの淫撃に、思考が霞む。
 ――犯されている。
 ただただ、無力な女として、犯されている。
 それも、排泄器官をだ。
「っ、ん、ん、んぅうぅ」
 惨めな気分になる。
 自分だけが、昴ぶっていく状況が。逃げ道をことごとく塞がれ、じわじわ追い詰められて、なす術なく崩されていく状況が。
 その感情は、排泄を見られたときの惨めさよりも、さらに重く、昏い。
「……ッ、ゥン……んぁっ、アァ……ッ」
 屈強な肉体。
 熱く激しい男性器。
 尻穴を犯されることで、支配するものと支配されているものの立場を、まざまざと突きつけられているようで。
「ぁ……! ぅうっ、あ、ア、あ……ッッ!」
 やがて……。
 大きな白い波が押し寄せてきて……呑まれた。
「ふぁ、あぁぁっ、うっ、ぅううッ!!」
 拘束された女体が、ビクンビクンと痙攣した。
 そして、尻穴に埋まるペニスが、ひときわ大きく脈打った。
「んぅうぅうぅぅ……ッ!!」
 ――ドプッ! ビュグンッ!! ビュグググッ!!
 腹の中がひどく熱かった。
 腸内で射精されたのだと悟り。
 精液を注がれている。尻の穴から、男の精液を飲まされている。
 腸内へ吐精されることで、この男に、“女”として捩伏せられたのだと――敗北の屈辱が、深々と刻まれ。
 本当の自分を護る“鎧”を剥がされてゆく感覚と、自分の知らない自分を奥から引きずり出される感覚が、ないまぜになって。
 肛悦と混乱の果てに霧散する思考。
 一方、身体は多幸感に包まれていた。
「は……はぁ……はぁ……ッ」
 凌辱による絶頂は、肉体と精神を同時に追い詰める。
 ――ヌリュウウ……グボッ!
「!? ッ、あ……ッッ!」
 ピストンが再開された。
「ぁわ……ゃ……!」
 “やだ”、もしくは“やめて”と続きそうになった言葉を、ギリギリで耐えて。
「こんなこと、続けたって、オレは、奴隷になんか」
 ならない――というクロロの抵抗の言葉は、調教師の唇で自分のそれを塞がれて、消えた。







2013/4/15
2013/6/24 加筆
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