上半身は椅子の背もたれへ、足首は左右の前脚へ、それぞれ縛られている状態で、クロロは目覚めた。
「おはよう、クロロ」
 目の前にはイルミが立っていた。
(ここは……音楽室か)
 放課後の音楽室で、同級生に拘束された状態で目覚めても、クロロはとり乱さなかった。
「あのケーキに、薬が仕込まれていたわけか」
「うん。ウチの執事長特製のケーキ、気絶するほど美味しかったでしょ?」
「ああ。次からは是非、薬抜きで食いたいな。……さて、お前の目的はなんだ? ヒソカに頼まれたか」
「ヒソカは関係ない」
「先に言っておくが、お前の家からは何も盗んで……」
「文系女子校生クロナちゃんのペット性活」
「は?」
 あまりにも予想外な返答に、思わずクロロは大きな目を丸くした。
「パッケージの写真は結構似てたんだけど、実際は微妙だった」
「待て、なんの話だ」
「でさー、コレが、登場したんだよね」
 と、イルミは鞄から、電動マッサージ機を取り出した。
「クロロが、あ、間違えた……クロナがあんまり気持ちよさそうだったんで、試したんだ。この世の中にはこんなものが存在するのかって、ちょっとだけ感動したね。……で、男に使ったらどうなるのかなって思って、ヒソカに使おうとしたら、彼が『クロナはああいう反応だったけど、本人はどうなんだろうね』って言ってきてさ。あーそれもちょっと気になるなーと……」
「……要するに、オレにソレを使って、『クロナ』の反応との違いを見たいと……そういうことか」
「うん」
「それで、こちらに拒否権は……ないんだろうな……」
「流石クロロ、わかってるね」
 イルミがクロロへ歩み寄って、彼女の黒タイツの股間部分を引き裂いた。黒い下着があらわになる。
「後で弁償するから安心して。……それにしても、同じ下品な恰好してても、クロロの方がクロナよりも断然品があるよ。肌も白くて綺麗だし、下半身も引き締まってる。下着はエッチだけど」
 イルミはそう評すると、その下着の上から、股間へ電気マッサージ機の先端を押しつけた。
「あ。もしかして、もう使ったことあったりする?」
「ない」
「よかった」
 電源スイッチが押された。
 ヴイィィィィィィッ!
 耳障りな低い機械音。
 イルミはクロロの下着越しから、秘裂をなぞるようにゆっくりと先端を動かす。軽く触れていたかと思えば、強く押しつけて、ふと離れる。昨日、ヒソカに散々いじめられたイルミは、自分が彼にされたことを、クロロにやっているのだ。
「……ッ……」
 クロロは顔を背けた。太ももが小刻みに跳ねる。
「声、我慢するんだね。せっかく防音設備完璧な音楽室を選んだんだ。遠慮しなくていいのに」
「……もう十分、『クロナ』と比べられたんじゃないのか」
「それ本気で訊いてる? クロロって、AVは観なくても、官能小説とか普通に沢山読んでそうだから、解ってるもんだと思ってたんだけど」
「オレが、イクまで、続ける気か」
「うん。てゆーか、ここでやめちゃったら、クロロの方がツラいだろ。パンツだって、もうこんなに濡らしちゃってるし」
 たしかに、下着のクロッチには、濃い染みが拡がっていた。
 イルミは電源をいったん切ると、濡れた下着に指をひっかけ、横にずらした。
「ほら、ヒクヒクしてる」
 透明な愛液で濡れ光っている秘所を眺めていたイルミは、
「クリトリスも……」
 と、包皮を剥きあげて、ぷっくり膨れた肉豆を指先で擦る。
「ぅ……くっ……」
 一番敏感な部分を直に触れられて、クロロは引き締まった肢体を震わせた。
 イルミがクリトリスを円を描くように撫で続けていると、とろっ……と、白く濁った粘汁が秘所から滲み出てきた。
「クロロ。クリトリスビンビンにして、本気汁まで垂らしてちゃ、クールぶってても意味ないよ?」
 耳許で意地悪を囁く。体温を感じさせない喋り方のくせに、吐息にはしっかりと熱がこもっている。
「思いっきり喘ぎなってば。仮に誰か来ても、クロロならそいつを黙らせる方法なんて、いくらでも知ってるだろ」
 そう囁くと、イルミは、電動マッサージ機をクリトリスへ押し当てた。
 こうなったイルミには、威嚇も脅しも無駄である。
 だから、クロロは来たる刺激に身構えることしかできない。
 スイッチが押された。
 ヴヴヴヴヴヴ〜ッ!
「! くぅうっ……! ンンン……ッッ!」
 先ほどよりも機械音は大きく、振動も激しい。スイッチを切り替えたらしい。
 イルミは、剥き出しの肉豆に、小刻みに激しく振動する先端を押しつけたり、離したりを繰り返す。
 想像以上の、強すぎる刺激。
 クロロは、先端をあてがわれた時、頭のすみで快楽を通り越した痛みを期待していた。痛みは我慢できる、だから、これ以上の醜態をさらさずに済むかもしれない、と。
 なのに、
「気持ちよさそうだね」
 イルミの言う通りだった。強すぎる刺激は、たしかに痛みとも受け取れた。だが、その痛みさえ、肉体は快楽として受け取ったのだ。
 そして……。
「は、ぅっ……〜〜ッ!」
 ――プシッ……プシャアァァ……ッ!
 マッサージ機の震え続ける先端によって、噴き上がった汁が撒き散らされた。
「わ」
 それはイルミの白い頬にも飛び散った。
 彼女は顔にかかった愛液を手の甲で拭ってから、スイッチを切った。
「……ハァ……ハッ……ハ……」
 肩を上下させながら、乱れた呼吸を整えるクロロ。ヒクンッ、ヒクンッと、絶頂の余韻から下肢の痙攣が続いている。
 イクまで解放されないことはわかっていた。しかし、こんなみっともない姿をさらしてしまうとは……。今さら恥ずかしがってもどうにもならないことはわかっている。もとはと言えば、自身の油断と食い意地が招いた不始末。
(だが、これで)
 イルミの気も済んだ筈……と、クロロはそっと前を見遣った。
(……?)
 ところが、イルミはクロロのブラウスのボタンを外しにかかっていた。前を開けたブラウスを左右に大きく広げて、ブラジャーを上へずり上げる。たぷんッと、張りのある丸い乳房があらわになった。
 イルミは両手で、その豊麗な乳鞠を鷲掴んだ。
「柔らかい。プリンみたい」
 白い乳房は、揉み手に素直に従い、容易く形を変える。
 乳首はすでにかたく尖っていた。
「なに、してる。オレは、もう……イッたじゃないか」
 無遠慮に乳肉を揉みしだくイルミへ、クロロが訊く。
「ん? ……んー……ぁむ」
 イルミは答えず、代わりに、いきなり右の勃起乳首へ吸いつき……。
 ちゅううううううう!
「ンゃぁあっ……ゃめ……!」
 乳輪ごと強く吸い上げられて、甘い声とともに、今まで言わなかった拒絶の言葉が、クロロの口から吐き洩れた。
「……ぷはっ……ははは、クロロもそんなエッチな声出すんだ。いやー、クロロの胸、プリンみたいな感触だから、味もそうなのかなってさ、つい」
 いつもの平淡なトーンだが、イルミが面白がっているのが、クロロには嫌というほどわかった。
「じゃ、次はコレね」
 瞳に飛びこんできたのは、男性器を模したディルドだ。
「あー、安心して。奥までは挿れない。クロロ、処女でしょ?」
 処女であることを看破されたことよりも、これから彼女がしようとしていることに、反射的に身を強張らせた。
 イルミはディルドの柄を持ち直すと、亀頭部分で肉襞をなぞり、クリトリスを押しつぶす。
「先っぽだけ挿れるよ」
 くぷっ。
 処女の秘裂へ亀頭だけ飲みこませて、楕円に口を開けていた肉襞を、更に拡げるように動かした。
 ちゅぷっ、ちゅぷぷぷっ。
 亀頭部分だけを出し挿れさせる、浅いピストン。敏感な入り口を集中的に捏ねくられ。
「ん、んっ、んぅ、ん……」
 白濁の粘汁が黒い亀頭に絡みつく。
 ――カチッ!
「!? ッ!? ああァァァッ!」
 突然の振動に、クロロは嬌声を上げてのけ反った。不意打ちの刺激に、今日一番の大声を出してしまった。
「言い忘れてたけど、これ、バイブレーション付きなんだ」
 シレッとのたまうイルミ。
「ふざけ、ん、ぅううう……ッ!」
 椅子ごと立ち上がらん勢いで、クロロは刺激から逃れようと身をよじらせる。頭ではどうにもならないことを悟っていても、身体はそういうわけにはいかなかったのだ。
「ゃ、だ……ハッ……はぁ……っま、たぁ……っ、イ……ッ! 〜〜ッ!!」
 クロロは総身を痙攣させながら達した。
 再び、みっともないほどの絶頂汁を飛ばしながら。
 ところが……。
 ヴヴヴヴヴヴ〜〜ッ!
「……!?」
 イルミは止めなかった。
 ぷりっと膨れた乳首を唇ではみながら、右手に持った電動バイブで処女肉をなぶり、左手でクリトリスをいじり続けている。
「もうイッ、イッた……二回、も、イッただろう……!」
「えー……だって、まだイケるだろ」
「は、はぁ……!?」
「てゆーか、このくらいでなに死にそうになってるんだよ。クロナの方がよっぽど体力あるんじゃないかな」
 これだから処女は、とでも言わんばかりな態度のイルミ。いじめる手は休めない。
 休みなくいじめられるクロロの方は、たまったものではない。
「イルミ、やめて、くれ……もう、イキた、っ……く、ないんだ……」
「どうして?」
「勘弁してくれ……オレがその手の質問……好きじゃないの、知ってるだろう……!」
「え、初耳」
 まずい。ここまで追い詰められるとは思わなかった。弱音どころか、関係ないことまで口走ってしまっている。
 そのとき……。
 ――ヌチュッ。
「ぅく、ッ……?」
 電動マッサージ機やディルドが身体から離されて、大人しくなった。イルミがスイッチを切ったのだ。
「はい、これでおしまい」
 先ほどまでの執拗さがウソだったように、イルミはクロロをあっさり解放した。
(……ああ、そうか)
 拘束を解かれている間に、自分の言動を振り返って、クロロは納得した。
 弱音と懇願。これがイルミをとめた。好奇心で自滅しないギリギリのラインを、彼女は知っているのだ。
「付き合ってくれてありがとう」
 イルミは、鞄の中から取り出したタオルと水の入ったペットボトルをクロロへ渡した。
「……」
 クロロはそれらを黙って受け取り、タオルで身体を拭く。
 イルミはイルミで、片付けをしていた。
「……イルミ」
「ん?」
「取引きしないか」





 それから二日後……。
「お前が我が身可愛さに、オレをイルミに売ったことを責めるつもりはない。……ただ、コレを、男に使ったらどうなるのか――オレも興味が湧いたんだ」
「そう言うわりには、目が鋭い」
 場所は生物室。
 机の上にきつく縛りつけられているヒソカを、クロロとイルミが見下ろしていた。
「そうしてると、解剖を待ってるカエルみたいだよ、ヒソカ」
 と、イルミ。
 ヒソカがこうなるに至った経緯は、先日、クロロがイルミに拘束された時とまったく同じだった。「ゾルディック家執事長特製のケーキ」にやられたのだ。
「じゃあイルミは、クロロに試したのか」
「うん」
「ボクも誘ってくれればよかったのに。どうだった?」
「契約違反になるからこれ以上は言えない。……じゃ、始めようか、クロロ」
「ああ」
 ふたりは、電動マッサージ機を一台ずつたずさえていた。
 ヒソカが片眉をつり上げる。
「ちょっと待ってくれ。二台も使うの?」
 これに対して。黒髪の美人女子高生たちは、二人同時に「まさか」とのたまった。
 片手に、もう一台ずつ。計、四台だ。







2013/2/26
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