手向けの言葉
モブ×イルミ ヒソカ×イルミ前提









「どうして、アンタみたいなヤツが、あのヒトの隣にいるんだ!」
 そいつは、吐き捨てるようにそう言うと、また鞭を振り下ろしてきた。
 服が破けて、皮膚が裂ける。血が流れる。
 若そうな外見のわりに、鞭の振り方はなかなか年季が入っている。それでも、実家の拷問訓練に比べたら、大したことはない。
 イルミが悲鳴もあげず、表情も一切変えないものだから、鞭を振るう者はさらに苛立ち、中性的な顔を歪ませる。
 一方、当のイルミはといえば、
(変な奴は、変な奴に好かれるんだなー……)
 と、思っていた。
 ――どうやらこの、男だか女だかわからない生き物は、なんと、あのヒソカに恋をしているらしい。捕まってしまった時に、どういう経緯で知り合ったかも簡単に聞かされたのだが、イルミにとってはどうでもいい話だった。ただ、この生き物が、イルミに並々ならぬ憎悪を抱いている――それだけは確かだ。
(まったく、こっちはいい迷惑だよ。邪魔ならオレを殺せばいいのに。あ、そうか、オレはヒソカをおびき寄せるエサなんだっけ。……てゆーか、オレを捕まえた能力を、真っ先にヒソカに使えばよかったのに)
 どうしてこんな回りくどい真似をするのだろう。
 愛しの奇術師を、閉じ込めて、逃げられないようにして、自分以外の誰の手にも届かないようにして、自分だけのモノにすれば、それで済む話だろうに。
(そうだよ。簡単な話じゃないか)
 ヒソカの性格を知っているイルミは、もはやこの生き物の能力が、彼には通じないことを看破していた。
(つまり、こいつは、理由はどうあれ、シナリオの組み立て方を間違えたんだ)
 髪を掴まれ、無理矢理正面を向かされる。
 イルミは目の前の生き物を見た。生き物の顔は紅潮していて、額にはうっすら汗が滲んでいた。
「なにか言いたそうな顔をして……なにが、言いたいの」
 問う声は、ほんの少し、震えている。
「バーカ」




2012/12/26
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