クロロはビジネスホテルの一室でイルミを待っていた。
 ドアが開いた。
「用件は?」
 問う来訪者に、クロロは包み隠さず打ち明けた。教師のこと、媚薬入り缶コーヒーのことも、好奇心から男に触らせていたが、結局蹴り飛ばして帰ってしまったことまで。
 もちろん、イルミも教師の視線には気づいていた。気づいていて、クロロ同様、特に問題視せずに放置していた。
「――つまり、オレにキミの相手をしろって、そういうこと?」
「まあ、そんなところだな」
「こういうことはさー、オレじゃなくてヒソカに頼めばいいのに。きっとよろこんで無料でいろいろやってくれるよ。……ま、ちゃんと金は払ってくれるんだろ? いいよ」
 イルミは依頼を引き受けた。


 ふたりは服をすべて脱いでから、ベッドへのぼった。
 クロロはイルミの裸体を観察して、思った。たとえば美しいめす猫が、人間の肉体を獲たとしたら、きっとこういう躯になるんだろうな――と。
 無駄な肉など一切ついていない。寸の詰まった胴体と、すらりと伸びた長い手足は、細くしなやかだが引き締まってもいる。腰から太ももにかけてのラインが特に流麗。陶器のように白い肌にはシミひとつない。
「じゃあ、膝をたてて仰向けに寝て」
 なのに当の本人の台詞には、ムードのカケラもない。
 しかし、イルミのこうした言動を、クロロもいちいち気にしていない。
 それに、早く身体の疼きをどうにかしたかった。
 おとなしく仰向けに寝た。
 イルミは彼女の膝頭を掴むと、左右に広げて、開いた下肢を眺めた。
「わー、びしょびしょ。あのさ、自分で済ませるって選択肢はなかったの?」
「ない。ないからこうして頼んだんだろう?」
「それもそうだね。……じゃ、はじめるよ」
 つくり物めいた細い指先が、柔肉を左右に拓いて、ゆっくり、中へと入ってきた。
 一本、二本。
 期待感いっぱいで待ち受けていた秘所は、熱烈に歓迎した。
「中もとろとろ」
 内から外へと軽く掻き出すように動かすと、なかに溜まっていた粘度の高い愛液の塊が、どろっと秘裂からこぼれ出てきた。
「……ッ」
 喘ぎ声をのみこみながら、クロロはイルミの指と男のそれとを比較していた。
 長さ、太さ、動き方を。
 男のそれは太かった。遠慮のなさではどちらもいい勝負だろうが、イルミの指の方が、こちらがしてほしいこと、触ってほしいところを、わかっているような気がする。
「く、ぅ…ッ」
 下肢が引き攣った。
 イルミがクロロの顔を覗き込む。
「え、もうイッたの? はやいなー」
 仕方ないだろう、こっちはずっと、イキたくてもイケなかったんだ――という本音の代わりに、クロロは「もう一方」の本音を口にした。
「……って」
「は?」
「ナカが痒くて……掻かれたら、気持ちよくて」
「ふーん」
 イルミは火照る膣肉に二指を埋めたまま、グリュンッと円を描くように回転させた。
 内壁が強く擦れた。
「い…ッッ」
 深く鋭い快感が、電流のように腰を駆けてゆく。悦んだ肉襞が細指を絞めつける。秘裂からは愛液が噴きこぼれた。
「じゃあ、どこが痒いか教えろよ。そこを思う存分、掻き毟ってやるからさ」
 高圧的な台詞。
 秘所はだらしないほど濡れてしまっていた。肉の隘路は絶頂を恋しがって微痙攣を繰り返している。
 吐息も甘さを増していた。
「クロロってマゾっ気あるよね。オレが掻き毟ってやるって言った時、ここがオレの指締めつけてきたよ」
「…てく、れ……」
「だから、さっきから聴こえないってば」
「指、指で、もっとしてくれ……」
「指でもっとハメて欲しいってこと?」
「…そう、だ」
 男の言葉には揺れなかった心が、イルミのそれには僅かに怯んだ。媚薬のせいか、それとも。
 けれど、今はそんなことを考えるよりも、気持ちよくなりたかった。
「もっとハメて欲しい」
 クロロは掠れ気味の声でイルミの言葉を復唱した。
 すると、イルミが、クロロの下肢へ移動した。
「イルミ……?」
「脚、もっと広げて。広げたら、両膝の裏を自分で持ち上げて」
「……」
 クロロは素直に従った。拒む理由が見当たらなかった。
 膝の裏を持ち上げ、太ももを上体へ寄せられるだけ寄せた。尻がベッドから少し浮きあがり、蕩けた性器や、その中心で勃起している肉豆、ひくつく小さな窄まりまで、すべてさらけ出した。
 こんな無様な姿、仲間には見せられないな――そうクロロが思ったのも束の間、イルミの左手の指が、膣内に深く埋まった。
 イルミは左指で肉壁をピストンしながら、右手の指ではクリトリスを弾いた。何度も、何度も。
「ぁく……うっ…う……!」
 敏感な内壁を撹拌されながら、充血した肉芽を弾かれる、二重の、鋭く強烈な刺激にクロロは悶えた。
 白濁の本気汁がイルミの指に絡みつく。プチュッズチュッ、と、淫靡な音がたち、その音は次第に大きくなる。天井部分を執拗に擦られた。強い。刺激が強すぎて痛いくらいなのに、その痛みすら気持ちがいい。
「あ…ぁ…んっ……ぃっ、ィク……ッ」
 苦痛と快楽との境界が曖昧になって。
 クロロは喉をのけ反らせ、身体を細かく痙攣させた。
 閉じたまぶたの裏側で、白い光がいくつも瞬いては消えていった。
 膝の裏を持っていた腕が、くたくたとベッドへとすべり落ちた。
「はい。綺麗にして」
 と、イルミが濡れた左手を鼻先につき出してきた。
 愛液の甘酸っぱい、すえた匂いが鼻腔にひろがる。
「は……」
 クロロは小さな口を開け、蜜汁まみれの指に舌を伸ばした。自分を気持ち良くしてくれた細い指を、子猫のように舐めた。
「よくできました」
 舐め終えたクロロの頭を、イルミは撫でた。
「イルミ……もう少し、付き合ってくれ」
「イキ足りない?」
 潔く頷いた。
「いいよ」
 相変わらず無表情な彼女だが、来た時よりもだいぶ機嫌がよくなっているのを、クロロは感じとっていた。
「クロロはそのまま寝てて。……よいしょ」
 イルミは横向きに寝るクロロの片足を掴み上げ、自分は膝立ちの姿勢になった。
 片足を高く持ち上げられたことによって、クロロの蜜股が大きく開く。そこへ、イルミは自身の股間を密着させた。
 いわゆる松葉崩しの体位だ。
 ふたつの幼い女性器が、ぴったりとくっついている。
 イルミの秘肉の蠢きをクロロは感じた。
「動くね」
 イルミが腰を動かす度、熱を孕んだ女性器同士が擦れあった。
 愛液でぬらついた肉ビラがむにゅりむにゅりと互いを揉みしだく。肉襞がめくれ、クリトリスが擦れ、ひっかかり、弾かれて。
「これ……」
「あれ? 気持ちよくない?」
 クロロは首を横に振る。
 気持ちいい。
「続けてくれ」
「うん」
 指戯とはまた違った気持ちよさがある。止めて欲しくなかった。
 ――ぢゅっ、ぶちゅっ…にぢゅ、にゅちゃ……。
 柔肉同士が絡み合い、愛液に混ざった空気が弾ける。
 白い肌が血色に染まって、珠の汗がいくつも浮かんでは流れた。
 体温が溶けて、煮崩れ、混ざり、絡み合って。
 息があがる。
 下腹が熱い。
 からだが、悦んでいる。貪っている。
 蒸れた甘い性匂が濃くなる。
 疼きが快楽へ昇華されて、電流が全身を駆けていった。
「ぅあ……くっ…ぅ……!」
 次から次へと押し寄せる絶頂の波に、クロロは身をあずけた。





「――で、どうするの、ソイツ」
「どうもしないさ。それに向こうも、こちらにコイツがある以上、下手なことはできないだろう」
 ふたりはベッドの上に寝そべり、デジタルカメラの画像を眺めていた。
 カメラには、他校の女生徒たちの淫蕩な画像がいくつも残されていた。その歪んだ幸福顔の数々を眺めながら、イルミがクロロに訊いた。
「上手かった?」
「比べる材料が少なすぎて判りかねるな……。それに薬も入っていたし」
「そっか。……てゆーか、よく触らせる気になったね。もしかしてクロロ、ああいうのタイプなの?」
「タイプ? あまり考えたことがないな。……タイプか。オレはどんな男がタイプなのか」
「知らないよそんなの」







2012/10/31 pixiv掲載
2012/11/14 加筆
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テーマ「人外ファンタジー」
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