ONE PIECE [LONG] | ナノ
この青はどこまで

「着替えさせんの忘れてた」
と、彼が言ったのは自転車で辿り着いた島に入ってすぐのことだった。
初めましての島、初めましての人たち、それなのになーんかジロジロ見られてるなーとは思った。けど、それはきっと彼の身長が異様に高い所為だからだと思ってた。いや、それにも間違いないとは思うけど...まさか私の着てる服の所為もあったとは思わなかった。

「そんなに変なんですかね、この服」
「まァ...色々だ。説明すんのが面倒」
「.........さいですか」

まだ知り合って一ヶ月くらいの私でも分かる。彼は物凄くものぐさだ。ビックリするくらい。
こんな状況下に陥って自分の家にも帰ることが出来ない私からしたら、家はあるくせに面倒だと帰宅せずにあの部屋の中、書類に埋もれて寝るとか変としか言いようがない。でも彼にとってはそれが日常でベストなんだとかよく分かんない。てか、羨ましい。

私は...別にワガママ言うつもりはない。今も十分平和な生活が出来てる。
彼の部屋の横にあった倉庫を改造してもらって部屋にしてもらった。家具は勿論、トイレやバスも付いてる。洋服は...あまりないけど全部新品で古着は一着だけ。ご飯とかは専用の場所に行ったら配給してもらえて沢山食べられる。運動だって道場とか訓練所に行けばおつるさんとかが相手してくれる。お茶仲間にガープさんが居て、沢山話もして笑って過ごせる環境をもらった。

でも...いつだって家が恋しい。家を捜しに行きたい。ただ、それが出来ない。

「とりあえず...服とか買っちゃう?」
「へっ?」
「大丈夫大丈夫、金はある」

多分、彼は気付いてるんだろうと思う。そんな私の気持ちに。
私はこの身一つでどうも此処に来たらしく、どうやってとかどうしてとか分からないままに此処で過ごしてる。私を知ってる人は居なくて、私も知ってる人は居なくて。来た世界も理解してもらえなくて、でも私もこの世界を未だ理解出来てなくて......カオスだ。

そんなカオスってる気持ちに彼は気付いてるんだと思う。見張り役で一番近くに居るから。
馬鹿みたいに泣き叫んだ時も、どうしようもなく落ち込んだ時もこの人が居た。優しく頭を撫でてくれた。不思議と...落ち着かせてくれる存在で、何かこう、頑張ろうって気になった。どうやってとかどうしてとか分からないんだから、これから先もどうにかなるかもしれないくらいの気持ちでいようと思えるようになったんだ。

「.........ベレッタ?」
「ハッ、あ、あんまり急すぎて、意識が、」
「服買うのに意識飛ばす必要あるかねェ...」
「と、いうより、この服じゃダメなんですか?何か変ですか?」
「だーかーらー、説明すんのが面倒だって」

一度立ち止まって自分の服を確認するけどおかしなところは一つもない。てか、新しい服で汚れてもいない。強いて言うなら...女性らしさとかは欠けた制服ではあるけどもう慣れた。会社でいうスーツみたいなものでそういう服じゃないわけだし。
そんなことを考えながら前を見て後ろ見てとしてたらクザンさんが急に腕を引いて歩き出した。

「まァ、こっちも付き合わせてるんだ。対価だと思っておれに買わせちゃいなさい」

対価って...そんな大層なことを私はしてるわけではないんですけど。

「うー...」
「何だったらおれが選んじゃうよ?思いっきりエロい服」
「それは嫌です!!」

むしろエロい服って何!自慢じゃないけど私、胸足りないんですよ!
そういえば...海軍に居る女の人って胸大きい人が多い。バリバリ違和感あるくらいに張ってる制服を見た瞬間、エロオヤジみたく「おおうっ」と思ったね。特に上位の人になればなるほど服の自由度も高くなって胸によく目がいく。多分、羨ましいんだと思う。

「踊り子とかの衣装、似合うと思うんだけどなァ」
「絶対無理です!華やかな装飾品とかが寂しさ倍増させますよ!」

踊り子の衣装といえばアラビア風ってことだよね?きらきらエキゾチックには胸が必要!多分、私じゃ寂しい。

「何の寂しさ倍増するの?」
「胸です!!」
「.........いや、そう主張されても、ねェ」

困ったように頭を掻くクザンさん。多分、これだけ言ったんだ諦めてくれたんだろう。
だけど服を着替えさせることは諦めていないらしく、しばらくきょろきょろした後、気になった店、かな?へと私を引っ張ってった。で、入ってすぐに店員さんに「適当に一式、金はまァある。エロくない服希望らしいから頼む」と言って丸投げ・逃走してった。逃走とは言っても店の外にはいるんだけど...アレかな、女性向けの服屋さんだから居心地悪かったかな、みたいな。というより、金はある、エロくない服希望って...何。

「えっと...ど、どのような服がご希望ですか?」

とりあえず突き出された私は勿論、店員さんも動揺してて...お互いに頭が回ってなくて。
本当に動揺してたんだと思う。私は適当にマネキンが着てた服を指差してしまったし、店員さんもマネキン引っこ抜いて私とマネキンを試着室へと入れちゃったんだから。まあ...それを脱がして着ちゃった私は更に動揺してたんだけど。


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