ONE PIECE [LONG] | ナノ


彼女は"別世界、別世界"って言うがこういうところで共通点がある。
船は知っているが電伝虫は知らない、海軍は知っているが海賊はいないと言い張る、紙とペンは知っていて使い方も分かっているのに此処の文字は書けないと言った時は完全にイカれてると思ったんだが...接すれば接するほど嘘でないそうな気がする。

「おい、後ろ乗れ」
「あ、だ、大丈夫ですか?私、重いかも...」
「いいから乗れ」

だったらいつかは...ってのも考えたくねェ。

おずおずと後ろに乗った彼女は控えめにおれのシャツを掴んだから腕を回すように指示した。おれは二人乗りなんざ初めてのことでうっかりコイツを海のど真ん中に捨てちまう可能性が高い。そう伝えれば彼女は驚いた声で「海のど真ん中!?」と叫んだがその時はもうすでにチャリは動き出し、陸の鼻先から海へと急降下する寸前だった。

「ひっ、」

ぎゅっとしがみつかれて背中に感じる体温。潮風に煽られてやってくる彼女の香り。
いつもは体が浮く感覚しか感じられないのに今は違うと思うと変な感覚がおれの中に芽生える。温かく柔らかいものが必死になっておれを掴んでる...落下してるにも関わらずそれを確かめた。

「大丈夫、死にゃしねェよ」
「あ、安全装置のない、す、垂直落下、とか、怖すぎです!」
「はァ?安全装置は立派におれに巻き付いてるだろ」
「それは私の腕です!シートベルト下さい!!」
「何だそりゃ」

とか言ってる内に水面が近付いたから道の確保をする。安全装置と化した腕の力が結構なモンでとりあえずいつもの二倍の幅にした。
こっちはそれなりの衝撃を予想してるが彼女はおそらくただしがみついてるだけ...まァ、死にゃしねェか。

「歯ァ食い縛れ」
「いっ!?」

安全装置が更に力を増した。と同時に結構な衝撃で水面着陸に成功した。
言葉はない。そのまま移動を開始したが安全装置も緩まない。ガチガチと背後で震えてるのが伝わるだけ。

「おいおい、子供の頃によく後ろに乗せてもらったんじゃねェのか?」
「こ、こんな、じゃ、なかった、です!」
「そうか。なら貴重な体験したな」
「心臓がいくつあっても足りませんよ!!」

怒りながらも緩まない安全装置に軽く笑って手を添えた。すると「片手運転しないで下さい!」と背中越しに怒鳴るもんだから適当に返事をして手を離した。それからしばらくしてようやく彼女は顔を上げたらしく、背中に冷気が通って安全装置が緩んだ。

「さて、何処に行くかねェ」
「行き先決まってなかったんですか!?」

ただ仕事をサボりたかっただけ、ただ息苦しい建物から出たかっただけ、ただ...世界を見せたかっただけ。行き先なんざどうでもいい。

「まァ、色々心配すんな。大丈夫だ」
「大丈夫に一欠片の安心感も湧かないんですけど!!」
「あー...昼寝してェな」
「なら行き先決めて下さいよ!!」

やっぱ行き先なんざどうでもいい。
普段と何か違う彼女が声を荒立てているなら、それでいいと思ったから。

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