ONE PIECE [LONG] | ナノ
一歩近づけば世界が揺れる

「先日の件、報告書の方まとめさせて頂きました」
「.........もう出来たのか?」
「はい。それから一昨日の支給品に関しての書類に目を通しまして、各部隊への配給も終えております」
「あらら、もうそこも終わっちゃったんだ」
「書庫にてセンゴク元帥とお会いしまして早急にとのことでしたので」

.........たったそれだけで体力削ってまで済ますようなことではないんだが。

「それから先程、海賊と小規模な小競り合いを起こした部隊があったようでその件につきましても本日中に報告書をまとめます」
「あ、あァ...」
「では、こちらのお目通しをお願い致しますね」

テキパキと仕事をこなし、キビキビと動く。真新しい海軍の服に身を包んだ彼女。
こんな場所に居ながら戦うことが出来ないお荷物を...とサカズキが文句を言ってたが今となってはもう何も言えんだろう。おれらみたいなヤツにはこうも素早く書類さばきは出来ない。経費計算も出来ない。割と適当にやっては上層部に雷を落とされて来たが少なくともおれのところではソレはなくなった。あの二人は未だ落とされていることだろう。

.........これがほんの一ヶ月ほど前に拾ってしまった人間なんだろうか。



「ほ、本当なんです、嘘じゃないんです」
「嘘じゃなかったら何になるんだろうねェ」
「そ、そんなこと、わ、私だって、」
「よさんかボルサリーノ。威嚇しては話も聞けんじゃろ。サカズキも、マグマは仕舞え」

何の前触れもなく現れた一人の女性。
センゴク元帥の部屋にたまたま茶菓子を食べてたガープ中将と、招集されてやって来たおれたちの前に気配もなく現れた。倒れ込むようにして現れ、顔を上げた瞬間に響き渡った悲鳴。本当に声を上げたかったのはおれたちの方で、すぐさまボルサリーノが剣を突き付けていた。

「もう一度だけ聞く。お前は何処からどうやって来た。何の能力者だ」
「わ、私、仕事してて、給湯室に行こうとして、人か、物かにぶつかって、それで顔を上げたら此処で、」
「それじゃ質問の答えになっちょらん!」
「サカズキ!もうお前らは下がっておれ!」

突然、剣を突き付けられた彼女は言葉を失って硬直し、無意識に手を挙げていた。その時、冷静に海楼石の手錠を彼女に付けたのはセンゴク元帥。それからはこの問答が数回に渡って行われていた。何処から来たのか、何の目的で来たのか、何の能力者なのか...それに対しての返答は随分と奇怪なもので到底、おれたちには理解出来なかった。

ただ分かったことは彼女は事務の仕事をしている。給湯室に向かう途中だった。それだけだ。

「恐いのがすまんかったのう」
「.........ううっ、」
「こりゃこりゃ泣かんでええわい。とりあえずゆっくりと話をしようか」

称号の階級は下とはいえ、ガープ中将はおれたちよりも上位に位置する人物で流石のあの二人も少し下がった。彼女はそれにホッとしてか急に泣き出し、センゴクさんとガープさんをオロオロさせたがゆっくりと尋問は続いた。また一から同じ質問、そして、変わらぬ回答...だがほんの少し変化があった。

「あ、の、」
「何じゃ?」
「此処......」



尋問すること一週間、医者にも見せた。だが、何も変わらなかった。
脳に異常はなく、体は至って健康なもの。但し、知識的な面においては著しく低下...というよりもゼロに近く、言葉は話せても読み書きは出来ない。物事を何も知らない。一般常識が欠落している。こんな人間、わざとでも存在しない。医者はそう言った。
自白剤を投与しても結果は同じ、彼女の脳は真っ白なものだった。

「ベレッタ」
「はい、何でしょうか」
「お前...本気でまだあんなこと言うつもりか?」
「.........本気だから、信じてもらえるまで言います」

誰もが首を捻り、誰もが馬鹿にしてた。だが、ガープさんだけは彼女を信じた。

「"別世界"ねェ...」


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