ONE PIECE [LONG] | ナノ
#01

医者ってのは人を助けるための職業。船医ってのはクルーを助けるために存在してる。
それなのにウチに居る第2医療班の船医は、平気で銃を構え、有無言わせることなく人を手に掛ける。その目に迷いはない。

「.........まーたやったのかい?」

停泊地で色んなモメ事はあって、その度に第2医療班の船医は現地に赴いて治療に当たる予定だが...いつもこうだ。
まず最初に引き金を引くのはアイツ。こっちは仕掛けて来るのを待とうとしてるってのに仕掛けるのはいつだってアイツ。あっけに取られているうちに片付けてしまうのもアイツ。その姿は...船医とは程遠い、ただの戦闘員だ。

「引く様子がありませんでしたので」
「はァ...怪我はねェな。自分で片付けろよいベレッタ」
「ご配慮有難う御座います」
「ほれ、お前らも撤収だ。人以外は全部片してしまえ」

けど何かが違うとしたら、彼女の戦闘は綺麗だということ。
どっかがぶっ壊れるわけでもなければ周囲が血で染まることもない。人だって...眠るように横たわっている。そう、眠るように。

「エース隊長、その方は私が連れて行きます」
「って、お前一人で持てんのかよ」
「大丈夫です。ですから触れないで下さい」

小さなライトを片手に人の眼球を確認する彼女、その瞬間は医者に違いない。が、そうしたのはコイツ自身。おれらは何もしてねェ。
いつも矛盾を感じる。こういう場面に遭遇する度にだ。

「細菌感染で死にたくはないでしょう?」
「何だそのサイキンカンセンって...」
「.........病死するってことです」

ふーん、と適当な返事をして人から離れればアイツは次の人へと歩いていく。

「なァ、アンタは感染しねェの?」
「.........私は医者です。感染などしませんよ」

ふーん、そんなもんなのか。よく分かんねェ。
一人、また一人と確認していくアイツの目には特に感情は見られない。何つーか、そういうことしちまったら何かしらの感情が沸くもんだと思うんだ。何つーの、「あーあバカなヤツ」とか「仕掛けて来た所為だろ?」とかそういうの。でもそういうのもない。

「.........変わったヤツ」

聞こえるか聞こえない声で呟いたらアイツは少しだけ振り返った。

倒れた誰とも知らねェやつの荷物を適当にまとめて置いてりゃ誰かが拾うだろう。おれらはそういうのはやんねェから道脇にまとめりゃ作業は終了。まァ...おもしれー武器とかは拝借することもあるが今日は特にそういうのもないらしい。作業を終えた仲間たちがブツブツ言いながら撤収してく。
おれもやることがなくなったわけで一緒に撤収しようと歩き出した。でもアイツだけは...まだその場に残っていた。


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