海の上のベレッタはどうしようもなくオッサンだ。下ネタを連発することだってある。だけど注意深く見るとその目は決して笑っちゃいない。多分、此処に合せるためにそうしているんだろう。無理してると気付けばこっちが溜め息を吐きたくなる。
陸の上のベレッタが逃げる理由も何となく分かった。海の上でのネタがリアルになるからだ。アイツは結局女だ。気持ち悪いと思わないわけがない。おれらはいつだって本気じゃない。遊びで道具のように扱うんだ。それに、嫌悪感を示さないわけがない。だからアイツは、遠く離れて月を見るんだ。早く月が消えるように、朝を待つために。そんなことをしても、意味はないのに。
おれがアイツを気に掛けるようになって2年は経つか。そろそろ馬鹿みてェだから終止符を打とうと思う。アイツは相変わらず月に捕らえられたまま、月を嫌いながら縛られたままだ。どうせおれもこのままだと先には進めない。どっちに転んでも先に進むために終止符を打とうと思う。
おれも月が嫌いになった。アイツが初めて月が嫌いだと言ったからじゃない。嫌いなのに手を伸ばされてるからだ。おれらを好きだと言いながら手を伸ばさないのに、嫌っているのに月には手を伸ばす。そんな月など消えてしまえばいいと初めて思った。アイツの寝顔を眺めながらおれもまた手を伸ばせないでいる矛盾を、早く何とかしたい。早くしないと、おれはコイツじゃないから手を伸ばしてしまうだろう。セーブ出来る間に、終止符を。どっちでも構わないから終止符を。
でも、出来るなら、月なんぞに渡したくない。
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