countdown 00
出航を控えた夕方近くのこと。随分と隣の部屋がウルサイ。エースの方じゃなくマルコの方の部屋で...私は確認するのを少し躊躇った。
この島へ来て5日、この短期間で色んなことがありすぎて何もかもが追いつかないでいる。ただ、分かったことは隣の男の心。だから、私は躊躇った。
私は、戦闘員で一番隊の副隊長で仲間で家族。私が彼らをそう見ないのと同じで彼らも同じだと思ってた。私は彼らと同じクルーだけど少し違う、だけど対等で同じようなものであると認識してもらってたと思ってた。自分がそう仕向けて。だけど、マルコはそうはならなかった、らしい。
いつもと変わらぬ表情で目だけがキツかった。目だけが、何かを訴えていた。それに思わず後退りしてしまう程に。
――トン。
たった一回のノック音が私の部屋に響いた。
「ベレッタ」
返事もしてないのにカチャリと開けて入って来たのは...そのマルコ。何故かテーブルなんか持ってる。
「ど、どうしたの?」
動揺したのか意味不明なテーブルに驚いたのか分からない声が出てしまった。
だけどそこを気にすることなくマルコはドカッと自分のテーブルを私の部屋の中に入れた。随分と物が散乱したテーブルで本から灰皿からコップまである。
「悪ィ、部屋の改造してて置き場ねェから置かしてくんねェか?」
「改造?今から?もうすぐ船...」
「分かってる。そう大した工事じゃねェからすぐ済む予定だ」
それで、さっきからウルサイと思った。そう言ったらマルコはまた悪いと謝った。
「......どっかに穴でも空けたの?」
「んなとこだ。悪ィが此処借りるぞ」
慌しい、何からしくもなく慌てて彼は去って行った。まだ...許可してないけど邪魔になるような場所に置いてないからいっか。
と、いうよりも意外と普通だし自分も普通に出来たことに安心した。私の中は...まだゴチャゴチャしてるから。
もうすぐ陸から海へ、新たな航海が始まる。
海へと出てしまえば私は...私は部屋を出ることはない。月を、見上げることもない。月が嫌いな私は、消える。
はあ、と息を吐いてドンパチやってる隣の部屋を無視して金庫室での残り仕事でもしようかと扉へと向かっていたら、マルコのテーブルに開かれたノートを見た。航海日誌か何かだろうか、意外と綺麗な字で書かれている。日付は...数年前で私が丁度此処に来たくらいだった。
いいか悪いかじゃない。開きっぱなしのマルコが悪い。私は、ソレを手に取った。
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