「悪ィ、部屋の改造してて置き場ねェから置かしてくんねェか?」
出入り口の横、勝手に置かせてもらったが困るとは彼女は言わなかった。
と、いうより...シンプルで片付いたベレッタの部屋はむさ苦しい男の匂いなんかしねェ。彼女の香りが、する。
「改造?今から?もうすぐ船...」
「分かってる。そう大した工事じゃねェからすぐ済む予定だ」
彼女の部屋にある時計をチラっと見たが、もうすぐと言っても一時間はある。
それぐらいあれば窓一つ潰すには十分で、アレをバキバキにブッ壊すのにも十分だ。後は掃除して...アレを搬入する。それもまたそう時間は掛からねェだろ。一時間もありゃ何とかなるし出来なくても何とかする。
「......どっかに穴でも空けたの?」
何処ぞのエースじゃあるめェし、んなわけあるか。
と、言いたかったが...仲良く談笑してる場合じゃなかった。おれはおれでアレの到着を待たなきゃいけねェし、コイツはコイツで...気付いてもらわなきゃいけねェ。本来、あんなモン恥ずかしくて見せたくねェんだが...気付いて、くれるよな。
「んなとこだ。悪ィが此処借りるぞ」
彼女の顔を見ることなく部屋を出た。去り際、アイツの顔を見ると...色々ダメになっちまうからな。
多分、気付く。そして見るだろう。
彼女のことだ「あんなの開けっぱなしにしてた方が悪いのよ」とか思いながら。
そうだと、助かる。こっちの思い通りに引っ掛かって、こっちの思惑に引っ掛かって...堕ちてしまえばいい。そして悔しがれ。
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