ONE PIECE [LONG] | ナノ
countdown 02

「おーいベレッター」

私を見つけて叫んだ途端、ベターッと背中に張り付いて来たのはエース。こういう時のエースは機嫌が良くて...頼みごとがある時と相場は決まってる。
自分の手持ちのお金が泡のように消えちゃって借りたい時とか不寝番を押し付けたい時とかに主に使用される技で、私もまた機嫌が悪くなければからかいがてら助けてあげるってのがお決まり。弟だもの、可愛くないわけじゃない。

「良かったァ。実は昨日の戦利品換金したらよ、すっげえ額になっちまって収拾つかねェの。管理頼むよ」
「やっぱり。まあ、とりあえず...金庫室に置いといて。こっちで処理するわ」
「サンキュ。愛してるぜベレッター」
「はいはい。もう用件は終わりでしょ。離れて」

荷物背負ってるみたいで重い、そう言ったらエースは可愛い荷物だからいいじゃん、と意味不明なことを言った。阿呆な弟だ。
隊長たちの中でエースは一番若くて一番幼い、その所為なのか皆が可愛がりすぎて時々甘えたさんになる癖がついてしまったらしい。出来れば早く大人になって欲しいところだけど...こればかりはどうしようもない、かな。
はいはい、いい子だから退いてねーと言っても珍しく退かない。何だろうと思っていたら、不意に横髪を耳に掛けられた。何だ。

「.........コレ」
「え?」
「コレおれのピアスじゃん!」

マルコが...くれたピアス、私のは盗られたままだったから付けっぱなしにしてた。

「昨日マルコに盗られてさァ、でもなんでベレッタが持ってんだ?」
「.........は?」
「だーかーら、ソレ、マルコに盗られたヤ、」
「おれがベレッタにやったからに決まってるだろ」

ペリッと首根っこ掴まれて背中から剥がれたエースの後ろ、無表情のマルコが立ってた。
何かこう、気まずいから会いたくなかったんだけど...会わないってことが難しいのが船上。今は陸に居るけど夕方には海に出るからいよいよだ。

「おれがベレッタにやった。異論はないねい?」
「.........ふーん、そういうこと?」
「そういうこった」

核心に触れない、でも私にも分かる。隠しもせずそういうことだとか、困る。
私は何も言ってない。何も答えずに逃げ出した。あの目が本気だと知って、本気で全力で逃げ出した。何もかも知られてた、何もかも気付かれてたことに頭がいっぱいになって、逃げ出していた。このままじゃいけないとは思っていたけど...まだ整理出来てない。

「信じらんねェ馬鹿マルコ!言いだしっぺの癖に!」
「え?」

馬鹿、阿呆、卑怯者と言葉を吐き散らすエース。あんまりドスドス床を踏んでたら落ちるかもしれないんだけど...

「何のことだよい」
「んなことになるくらいなら無視すりゃ良かった!ほんと信じらんねェな!」
「な、何...」
「マルコ最悪。マジ最低」
「何とでも言えよい」

ピアス譲渡を巡っての暴言なのか。確か...おぼろげだけどこのピアスを最初に手にしたのはエースだったような気がする。

「返そうか?」
「へ?」

本当に欲しかったか、プレゼントしたい人がいたか...
どっちでも構わないけどエースが気に入ってるんなら、いいや。

「マルコには悪いけど...ピアス、エースに返すよ」
「ちょっ、待っ、おれ別になんでお前がソレ持ってるか聞いただけでっ、」
「でも"おれのピアス"って言ったでしょ?」

私がコレに惹かれたのも事実だけどサルベージには参加してないから。そう思って手を掛けたら慌ててエースが止めた。

「いらねェから!大丈夫!ちょっとピアス欲しいかも、くらいで見てただけだから!」
「.........そう?あ、ならお古だけど私のピアスあげよっか?」
「え?」
「マルコが持ったままだけど...」

チラリと視線を移せば相変わらず無表情のマルコがやり取りを監視してる。
腕組みして見下ろすように私を見て...その後にエースを見た。ビクッとエースが震えたように見えたけどきっと気の所為。

「捨ててないでしょうねマルコ」
「.........あァ。持ってる」
「エースに渡して」
「.........あァ、断るよい」
「はい?」
「断るって言ってんだ。誰がエースなんかにやるかよい」

無表情が一変してギッとキツい目に変わった。エースが何か後退りしたみたいだけど同じくらい私も後退りしてしまった。
よくよく考えたらエースにあげるあげない以前にそもそも私のピアスでマルコのじゃない。あげたつもりもない。


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