ONE PIECE [LONG] | ナノ


唇噛んで我慢してる"お前"が欲しいんだ。
涼しい顔して平気で嘘を吐く"お前"が欲しいんだ。
目の奥に本心を隠した"お前"が欲しいんだ。
月に手を伸ばす、今にも泣きそうな顔した"お前"じゃねェと、ダメになったんだ。

「紅一点の戦闘員で強くて一番隊の副隊長に成り上がったお前がクルーに馴染もうと無理して笑って、それなのに陸に上がったら一人で月見て泣きそうな顔してる。いっつも涼しい顔して嘘ばっか吐いてるヤツがよ、馬鹿みてェに月に手伸ばして朝待って...んな姿見た日からずっと、」

欲しいものがたった一つになった。
その時おれは別の女を抱く無意味さを知った、実感した。あの行為には確かに自分の感情も相手の感情もいらねェ。だけどおれの感情が傾いた時、おれはお前の感情だけが欲しくなった。お前じゃねェと勃つモンも勃たねェんだ。どう、落とし前つけてくれんだよい。

「お前はおれらの行為が嫌いだ。死ぬ程嫌いだ。汚らわしい野郎に見えるだろうよ、あいつらもおれも」
「なん、で...」
「けどな、おれはお前が好きだから抱きたい。"そんなん"じゃなく本気で抱きてェんだよい」

呆然と立ち尽くすベレッタに一歩近づいたら二歩は下がられた。
それがおれらと副隊長であるお前との距離なら大股一歩で埋めてやる。届かねェ距離じゃないからな。

「夜が嫌いで月が嫌いなら...おれがその時間全部喰いつくしてやるよい」
「マル、コ?」
「その時間、全部おれに寄こせベレッタ」

スッと彼女と同じように手を伸ばせば今度は派手に下がられた。お陰で空振り。
戸惑いと動揺と恐怖、か。そんな混乱した色を秘めた目がおれを射抜いたが今更後には引かねェし引けねェ。
抱き締めたい気持ちが彼女にも伝わってることくらい見える。おれの言葉を理解してるのも見える。ただ、応えるには...時間が足りないんだろう。

広がった距離の中、おれは彼女をただただ見つめた。
見つめられたベレッタは、月に似た色のピアスを靡かせて...走り去った。

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