ONE PIECE [LONG] | ナノ


戦利品の質とかを眺めながら歩いていたら何か目に付くものを見つけた。
金色のフックピアスでシンプルなイエローゴールドのドロップが付いてる。遠目でよく分からないけどあの色からするとメッキではなさそう。ちょっと手にとってみようか、そう考えて手を伸ばし掛けた時、誰かがそれを掴んだ。

「お、コレいいじゃん!」

私は、伸ばし掛けた手を引っ込めた。
よく考えたら手を付ける資格がなかったんだった。サルベージの手伝いなんかしてないし。誰も手に取らなければしれっと盗んじゃえとは思ったけど、誰かが見つけてしまったのであれば諦めるしかない。くそう、と思う気持ちはあったけどただそれだけのこと。私はまたグルリと戦利品を見て回ることにした。

「換金したらアイツと遊べっかなァ」
「コレが餌になるといいが...」

その間に響く声。とっても嬉しそう、だけどまた私の中でモヤモヤが広がる。
自分がこうなると分かってて発案した。自分がそうさせたことには間違いないのに、胸中が複雑になるとか...笑えない。

「よっしゃ、これで高級なトコでも行くかァ」

.........ダメだ。
また頭の中でごちゃごちゃと色んなものが長ったらしい糸になって絡まる。また、矛盾が始まる。自分がそのテの資金を稼がせるためにやらせたのに、いざソレに向かうことになったら気持ち悪いとかおかしい。こればかりは私の思考がおかしいのに、変えられない思考が脳内に渦巻く。

私は人混みの中、しれっと甲板を後にした。後はマルコが何とかしてくれるはず。そう、思って。



私は、どうしたいんだろう。

別に、快楽を買うのも売るのも自由だ。体を売るのも買うのも自由だ。そうでなくても体を重ねることに理由なんかは用意しなくていい。そんなこと分かってる。分かってて私は出来ないだけ、他の人は違うだけで。その価値観に合わせる必要はなくて、私もそういう価値観に合わせる必要もない...
それも分かってる。分かってる分かってる、それはあくまで脳内だけ。気持ち的には理解出来ず納得も出来ない。

それで?私は一体どうしたいんだろう。

今日だけは誰よりも早く船を降りた。降りて見つけた広い原っぱに私は転がった。
私は意外と頭の硬い人間で、脳内で色んなことがグチャグチャしてる。と、移り変わろうとする景色の中で思った。頭を柔軟にしようとして結局は理解に苦しむから整理出来ないんだとまた脳内で考えた。だったら理解しようと努力する?と囁く自分とどうせ理解出来ないと囁く自分、どっちもどっちだ。

「.........どうしたいんだろう」

どうしようも出来ない、だから逃げてる。そのことだけはハッキリしてて...だったら結論は一つ。早く、朝を迎えること。
あの船は好き。乗って後悔はない。仲間も好き。皆、楽しい人たちばかりだもの。それでも見たくないものは見たくない。聞きたくないものは聞きたくない。知りたくないものは知りたくない。理解出来ないことは...理解出来ない。そうなる時はそれに背を向けるしか私には手段がない。それしか出来ない。

月に向かって手を伸ばした。まだ、顔を出したばかりの、月。
いつも思う。この月がどうにかなったらずっと朝のまま、太陽のままでいられるのだろうか、と。あまりにも幼稚な発想だけど、こういう日によく思う。握り潰せるくらいの位置にあったなら、私はいつも以上の力を以って破壊するのに、と。


「ベレッタ」


呼び声なんて有り得ない。


「.........マルコ?」
「何やってんだよい」


有り得ないのに、月夜に照らされたマルコは、確かに居た。

(7/21)
[ 戻る付箋 ]

×
「#学園」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -