ONE PIECE [LONG] | ナノ
countdown 04

「はいはい、死なない程度に引き上げてねー」
「.........参加しねェのかよアイツ」

サルベージ大会は予定通り敢行され、準備の整った船が16隻沖へと集まった。私はモビー号の船首で指揮を執るべく拡声器を片手に叫んでいた。此処から見える限り、全クルーのやる気は少ない。一攫千金という文字はどうやら彼らにはないらしい。

「はい、コソコソ禁止!今日は昨日より綺麗なお姉さんが待ってるぞー」
「.........待つかよ」
「待つに決まってるでしょ?今日のサルベージ大会は君たちの資金稼ぎでもありまーす。宝石の一部のネコババを私が許可します」

と、でも言っておけばそれなりにやる気は出るだろう。私は拡声器をフル活用して各方面に伝えた。
一部のネコババを許可、拾ったもん勝ち、即換金で夜の資金...とにかくサルベージさせる目的で叫べば一隻一隻、ゆっくりではあったけど作業を開始した。資金稼ぎにサルベージ、これが天下の白ひげ海賊団の姿とは誰も思わないだろう。

「この海域で宝石商の貨物船が難破してるそうなので頑張って下さーい」

恨めしそうな目をされても痛くも痒くもない。私は拡声器を持ったまま、今度は見張り台の方へと急いだ。


今朝、目が覚めるといつもと同じ天井で全く違う部屋にいたことに驚いた。
目を泳がせながら考えること1分。ああ、酔ってマルコの部屋で寝てしまったのだと気付いた。生ハムメロンの件くらいから微妙にしか覚えなくて、その後は何を話したのかもどうやってベッドに移動したのかも覚えていない。多分、自分で勝手に転がってしまったんだろうと思う。服は着てるしシーツにも包まってた。そして、遠いソファで寝苦しそうにしてるマルコが見えた。あーあ、と手を合わせる自分が居た。
私が起きてすぐにマルコも起床したから「ごめん、ベッド占領した」と言えば「自分の部屋でソファに寝るとか思いもしなかったよい」と嫌味も言われたわけだけど流石に怒れなかった。調子こいてお酒を飲んだのは事実だったから。


見張り台の上から各船のポイントを海図と資料を照らし合わせながら確認した。
さっき言った宝石商の貨物船が難破したってのは本当で私がそれなりの情報屋からその位置情報も買ったから間違いなかった。そのポイントに一番近いのは...すっごい遠いけどエースたちの船。多分、そのままだときっと当たらない。

グルリ、180度見渡しながら各船の当てる宝の確率と資金の換算していたら思いの外近くでやる気なさそうなマルコがこっちを見ていることに気付いた。

『当たりは何処だ』

一文字ずつ区切りながらマルコが口パクしてる。
本来なら教えないけど昨日のことがある。私は何気なく拡声器で位置を知らせた。

「鳥位置北東3800火右過ぎ50000」

マルコの位置から北東に進むこと3800mにエース、彼を右手に通り過ぎて50000mの場所、という意味。
物凄い分かりやすい説明をしたつもりだけど突如ソレを言われても周囲は「は?」となるわけで。その中でマルコだけがニヤッと笑って『了解』と口を動かしてその方向へと船を進めていった。



随分と長い時間を掛けてサルベージを終えた船たちがモビー号周辺へと戻って来た。
それなりの成果を上げたところもあればガラクタばかり拾ったところもある。当然だけど一番隊の船は大当たりにも程があって、小さなものから大きなものまで宝石といったところだ。さすが情報屋、高いお金支払った甲斐があったわ。

「.........お前、マルコに情報流したろ」
「流してないわよ?」
「いいや、流してる!」
「やーねエース。私、ちゃんと拡声器で皆に位置を知らせたわよ。気付かなかったの?」

クスクス笑いながら軽くあしらえば、プリプリ怒りながらエースは宝の方へと向かった。
どさどさ甲板に上がって来る戦利品。甲板いっぱいになってく宝石たちはどれだけの時間が経っても腐食しないものが多いから助かる。価値は変動するけど腐らないってのはいいわ、ただこれだけあると置く場所に困るけど。

「じゃ、適当に好きなのを持ってって。但し、取り過ぎた場合は始末書ペナルティよ。マルコに見張らせます」
「オイオイ、自分でしねェのかい」
「面倒だからパス。それにある程度の計算もしときたいし」

情報だって流したんだからいいでしょ?と笑えば大きな溜め息を吐かれたけど押し付けた。
転がる宝石と群がるクルー。まるで角砂糖に群がる蟻のようだけど嬉しそうだから何も言わない。半分くらい持って行かれたところで2億くらいは残るだろうか。それくらいあれば此処に停泊する間は何とか大丈夫だと思う。


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