ONE PIECE [LONG] | ナノ


「こんなのおかしいです!アレはまだ年も若い...しかも女性です!」
「決めたのはおれじゃない」
「もう一度、儀式をやり直すべきです!」

儀式を終え、耳に穴を空けられて部屋で痛い思いをしているベレッタに聞こえるくらいの声で従兄は叫んでいた。
廊下、だろうか。わざと叫んでいるに違いないと彼女は思った。

神官となるのは自分だと思っていた彼は自分の父やベレッタの父にあたる伯父、その息子ならまだしも彼女が選ばれたことに表面上は分からないが内心では酷く憤慨していた。神官とは王の側近だ。だが神の声を聴ける唯一の存在...つまり王に匹敵する存在であると思っていた彼は、その地位を虎視眈々と狙っていたのだ。だが、結果として選ばれなかった。しかも一回りは違うだろう小娘が神官、怒りは収まらない。

面倒くさい、ベレッタは痛む耳を押えながら思い、立ち上がった。

「彼女が荷を負うにはあまりにも若すぎる...可哀想です」

抜け抜けとよく言う。

「.........そうね、あたしもまだまだ遊びたい」
「ベレッタ!」
「彼が代わりにお役目を果たしたいとおっしゃるならば...こんな嬉しい事はないわ」

ドロドロ、腐ったゴミ臭い従兄と彼女は常々思っていた。
剣術を教わる時も正式なやり方など教えてはくれなかった。全てがでたらめ、それでもがむしゃらに剣を振るった。勉強だってまともに教わった覚えもなく、泣きながら祖父に教わったのも覚えてる。この人は、色々と汚ない。

「.........ならば刀を、手渡してやるといい」
「それだけでいいの?」
「あァ、それだけでいい」

神官だった祖父は知っていた。

「.........そのお役目、私が代わりに果たそうベレッタ」
「よろしくお願いします」

神に選ばれるということがどういうことかを。

二本の刀はゆっくりと彼の手へと渡った。だが彼女が手を放した途端、彼は弾かれるように刀を床へと落とした。これにはベレッタも驚き、慌てて刀を拾い上げた。そして、再び彼の目の前に差し出した。再度、彼は受け取ろうとしたが結果は同じ。彼はその刀を持つことすら出来なかった。それどころか、刀に触れた場所はどんどん赤みを帯びていくばかりだった。

「.........これで気も済んだだろう」

選ばれなかったということがどういうことかを。
その身を以って守る"レガリア"は、その時まで簡単には主を変えない。主以外、振るうことも出来ない。



ベレッタは神官になった。認められなくともなった。
妬んだ親類、心配する父と兄。だけど祖父だけは涼しい表情だったから分かっていたのかもしれない。

初めて聴いた神の声は......"初めから、決めていた"だった。

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