想い咲き乱れて
.........初めてのデートだ。
よく考えると停泊した街の何処かで遭遇することはあっても肩を並べて歩いたことなんざ一度もねェ。つーか、同じタイミングで船を降りたこともねェ。だからか、異様にドキドキする。ただ横に並ぶ小さな存在があるだけで。
「な、何か必要なもんとか、あるのか?」
うわダセェ。ちょっと言葉噛んだ。
「本屋で医学書を一度眺めようと思ってるんですけど」
イガクショ。あァ、いつも眺めてるヤツな。
何つーか真面目なんだよな。ずっと勉強ばっかやってんのは癖みたいなもんだから仕方ねェのかもしれねェけどよ、たまにはこう、何か、な。
「お前いつもソレばっかだな」
「他に取り柄ないですから」
「なっ、別に、そういうことを言わせたいんじゃなくて、」
「分かってますよ。もっと別のことも考えていいんじゃないかって言いたいんですよね」
そう、それだ。大事なのは分かってるけど頭ん中パンパンにならねェようにしないといけないってマルコも言ってたし、勉強しすぎてもイイコトはないってイゾウも言ってたし。
......てか、可愛いなァ。よく見たら今日、スカート穿いてんじゃん。
船に乗ってる間は動きやすさを重視してかショートパンツ、船を降りる時は戦闘を考慮してかホットパンツだってのに。これってもしかしてアレか?おれの為にオシャレしてくれてる、とかか?
「とりあえずは目的物、その後は......って、どうかされましたか?」
「あ、いやっ、何でも、」
「......体調悪いとかじゃないですよね?」
見惚れて色んな想像とも妄想とも言えるものに心馳せていました、なんて言えねェ。
「いや、そんなんじゃなくて、フツーに、そのっ、」
陽に焼けていない白い肌にくっきりと大きな目がおれをジッと見ている。
「か、可愛い、な、とか」
「.........」
「.........」
「い、行きますよエース隊長!」
「お、おう!」
ふわり、揺れるスカート。
ふわり、揺れた横髪の隙間から見えた真っ赤な耳。
.........きっとおれの耳も真っ赤だ。
title by シュガーロマンス
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