ONE PIECE [LONG] | ナノ


「よ、うまくいったんだってなァエース」
「.........」

告白はした。最初のは覚えてねェけど少なくとも二度は伝えた。
おれの気持ちはちゃんと伝わってるし、ちゃんとおれを"男"として見るって言った。ドキドキするって言った。けど何だよ、全然変わらねェ生活してるってどうよ。全然、相手にされてねェ気がする。

「おや?不納得な顔だねい」
「.........別に」
「ま、あいつも色恋でギャアギャアするほど若くねェからなァ」

若くないって言っても...確かおれと10は離れてない。
騒いだって別に...いいんじゃねェかと思う。いや別に騒げとは言わねェけど変化がないってのは不安になる。だって、昨日はあんなに可愛かったのにさ。

「いや、もしかしたら...」
「何だよ」
「あいつの方がおめェより青いかもしれねェなァ」

何だソレ。意味分かんねェよ。
ケタケタ笑いながらマルコはおれの背中をバンバン叩いて歩いてく。何か...訳知りみてェな態度がムカつく。その風でゆらゆらしてる髪、根こそぎもぎ取るぞパイナップルめ。ちゃんとおれにも分かるように説明しろよバーカ。

不納得...不納得だよなァこの気持ち。
おれの方が好きが大きすぎてこんなことになっちまってんのかなァ。いや、そもそもベレッタさんは...おれのこと、好きなのか?

.........
好きって、言ってねェ。記憶辿ってみたけど言ってねェっぽい。
けど、自分の気持ちが分からなくなったってのは...悪いことじゃねェよな。


あの後...誰かの気配を感じてお互いにスッと体を離した。
多少、ギクシャクしたような雰囲気が出ちまって...それが何かすっげェおかしくなって二人で爆笑して...そっからもういつも通り。着替えて来ると言ったおれをベレッタさんが待っててくれて朝メシを一緒に食った。いつも通りだった。後もずっといつも通り。

無かったことにはなってねェってのは分かるんだ。
けど、いつも通りってのは...いつも通りなんだ。それ以上でもそれ以下でもない。

つまり、おれが望む先とは違うんだ。


.........いや、おれの望む先って何だ。
ベレッタさんと...一緒に騒ぐこと?ベレッタさんに好きって言ってもらうこと?おれが望むものっていうのは...何になるんだろう。ただ一緒に居ること?それもまた何かが違う気がする。

マルコが言ったうまくいったって何だ?
おれはもしかしたら...何一つとしてうまくいってないんじゃないか?そんな風にも思えて来る。

.........

ヤベェ。全っ然分からねェ。だから...ベレッタさんに会いに行こう。
彼女に会って、彼女を見て、おれが何を思うのか知らなきゃいけねェ気がする。このままでイイ、なんてことは絶対ないって分かってんのに、だったらどうしたいのか?ってのが全然分からねェから...会って気付きたい。自分の中の何かを。


そう思うと、おれは無意識に走り出していた。
さっきおれが昼メシ食った時はベレッタさんは居なかった。けど、返却皿の量からして間違いなくベレッタさんはおれより先にメシを食ったに違いない。だとしたら...この時間は洗濯物を干しているか資料整理をしてるかだ。いや待て、確か今日は...天気が悪かった気がする。だとしたら...資料整理で書斎だ。

脳内でカシャカシャと浮かぶビジョンを切り替えつつ思う。
一度は甲板へと向かおうとした足を反転させて書斎へと向かう。もし、その場に居なかったら次は......

「あ、エース」
「いた!!」
「へ?」

危っねェ。ぎりぎりだ。擦れ違い寸前だ。
書斎から出たばかりのベレッタさんを発見。慌てて声を掛けて駆け寄れば、きょとんとした顔のままおれを見てて...あ、やっぱ可愛いと思った。

「どうしたの。慌てて」

それから、やっぱ好きだと思った。好きで、好きで。
おれは...確信が欲しかったんだ。おれがベレッタさんが好きだから、同じようにベレッタさんにもおれを好きになって欲しかった。同じ好きを抱えて...一緒に生きていきたかったんだ。

「えっと...大丈夫?何か、エース泣きそう」
「.........大丈夫とか、じゃねェ」

今まで通りとは違う。同じ気持ちなんだって、おれに言って欲しいんだ。
腕を伸ばして小さな体を抱き寄せて......これで何度目だろうか、捕らえた体は未だに遠くにあるような気がする。此処にあるのに、遠い気がするんだ。これはもうずっと昔からそう思っていた。

「ベレッタさん」
「は、はい」

ドキドキする。同じくらい響くベレッタさんの心臓の音、ちゃんとおれにも響いてる。

「おれが、好き?」
「な、何、きゅ、急に...」
「好き?おれ、大事なこと聞いてなかった。それに...急じゃねェし」

おれの手の内は見せた。全部、きちんと見せた。ベレッタさんだけが手の内を見せない。
知りたいんだ。はぐらかすとかじゃなくて本心を、今、同じくらい早鐘を打ってる心臓が本当は何を意味してるのか、知りたいんだ。おれは馬鹿だから何となく察するとかじゃなくて言葉で。

「おれが、好き?」

今度は答えをくれるまで離さない。今度は誰が来ても...離してなんかやらない。
遠くで誰かの足音が響いて、誰かが誰かと話しながらこちらの方向へと向かっている気配を感じてもおれは離さない。

「おれはベレッタさんが好きだ。だから、同じ顔とか出来ねェよ」
「.........っ」
「だから、答えて」

ベレッタさんの頭を眺めながら問う。
顔を上げるだけのスペースは与えてる。どんな顔をして何を口にするのか...それを確かめるのはすげェ怖いけどおれはきちんと見たい。

猶予はあまりない。響く複数の音がどんどん近付いて来る。
チラッとその方向を確認した時だった。

「.........おわっ、」

油断したわけじゃねェのにおれの体が自分の意思とは関係なく違う方向へと傾いた。
それと同時に静かにドアの閉まる音がして...唇に柔らかな感触。ぎゅっと目を閉じて唇を押し付けて来るベレッタさんの姿をおれは確かに見ていた。


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