今しかできないことをしよう
後悔はない。こんなに幸せなんだから後悔なんて有り得ない。
大好きな人と結ばれることは本当に嬉しい。だから後悔はない。だけど後悔というか...うん、後悔していることが一つだけあった。
「えっと...そんなに睨まなくても、ねェ」
「.........動けないの、クザンさんの所為ですからね」
「えー...そんなこと言ってキモチ良かったでしょ?」
「そ、そういう話じゃありません!」
ちょっと、その、確かめすぎた。
クザンさんが求めるがまま、私は彼に全てを委ねた。
あの声で耳元を責められて...冷たい床の上での情事が一回。そのまま、ソファーの上で私が彼に跨ったまま求められること一回。ソファーに中腰にさせられて後ろから攻められること一回。疲れ果ててどうしようもなくなったというのに...浴室で綺麗にしてもらう予定が更に一回。彼が枯れていないと言ったのは、これだと気付いた頃には玄関先に無残に置かれていたベッドで再び求められていた。ここから先のことは全く覚えていない。
嫌じゃなかったし、その、気持ち良かった、けど、やっぱり後悔してる。
「その、も、物事には限度というものがあるんです!」
「まァ...一理あるね。おれはまだ全然足りねェし」
「!?」
「多分、毎日全弾打ち尽くしても翌日は復活しちゃう気がする」
そ、そういうものなんですか?そういうのってそういうことなんですか?
そりゃ私だって...今までにそういうお付き合いをした人が居なくもなかったけど...そういうもんですか?そんなにですか?え、そんな、ですか?
「.........あれ?もしかして、これからのこと想像した?」
「ち、違います!げ、限度の差に、驚いてるんです!」
にやにや笑う意地悪なクザンさんにビシッと否定の言葉を投げ付けた。でも彼の顔色は変わらない。
何で平気なんだろう。クザンさんはクザンさんであんなに...その...あれなのに。毎回あんなにしてたら...多分、私は死んでしまうと思います。今でさえ、体の端々が痛すぎて起き上がることすら苦痛で死にそうになってるのに。
「冗談だよ。昨日はちょっと、まァ、アレだ。制御出来なかっただけ」
「.........本当ですか?」
「本当か嘘かで言えば...まァ、制御出来なかったのは本当。ヤレと言われたら毎日あれくらいは出来ると思うけど」
「じ、自粛して下さい!」
仕事に影響が出るし、今だって部屋は全然片付いてないんです!
あの日から全く片付いてない証拠ですよ!いつまでもこのままじゃ...私、皆さんに顔向け出来ないです!
「もう仕事に行って下さい!私は何とかなりますから!」
「え?おれ、連休もぎ取ったんだけど」
「.........はい?」
連休って、確かよほどのことがないと取れないってボルサリーノさんがおっしゃってたような。
いや、連休は取ろうと思えば取れるけど何だかんだで呼び出されるから意味が無いともおっしゃってました。それらを総合すると...結局多忙で休めないって話ですねと言ったら彼は苦笑して頷いてた。
「昨日は確かに無断欠勤しちゃって、あの後センゴクさんに怒られたけどさ。事情説明して今日から三日間は部屋の掃除に専念するよう言われたのよ。それでお休み」
どんな事情説明をしたのか、怖くて聞けないです。
センゴクさん...私が言うのも何だけど、ちょっと私に甘い気がします。確かに私の周りにはおつるさんやガープさんがいらっしゃって甘やかしてくれるんですが、元帥であるセンゴクさんまで甘くなくても...ねえ。クザンさんには皆厳しいのに。
何にせよ連休を取ったのは事実のようでゆっくりするクザンさんに私は全力で指令した。
「では、玄関先にある箱の中身を各棚に収納して下さい!」
皆さんが調達して下さった代物は山積みのままではお話にならない。
きちんと中身を確認した上で用途別にあるべき場所へ収納して初めて意味を成す。そんなニュアンスでクザンさんに指示を出せばとっても嫌そうな顔をされた。
「えー...今やるの?」
「今です!片付かないなら、その......」
「うん」
「.........し、しません!拒否します!」
朝から思ってたけど...クザンさんの顔がずっとやらしい。
此処に初めて来たとはあくまで同居人だとか家政婦だとか...そんな感覚で、少なくともこんなに何か甘いというか何というか...そういうつもりじゃなかった。けど、今は違う。お互いの気持ちを知ってしまった、確かめてしまった。敢えて明言しなかったけど、これって、カレカノの同棲...
「.........おれが迫って本気で拒否出来ると思ってるの?」
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