.........そう、そうだ。私も同じだった。
私は...私の意思で帰ることが出来た時、この気持ちに踏ん切りがつくかどうかが不安だった。だから蓋をした。
自分の気持ちに気付いてても、勝手な勘違いをしてしまっていたとしても...蓋さえしておけば物語の主人公に片想いしちゃっただけの過去になると思ってた。だから考えなかった。考えたくもなかった。
「けど急に怖くなったんだ」
「.........怖い?」
「うん。君の意思以外でおれの前から消えちゃうかもしれないって思った時」
そう、私も自分の意思でなく此処から離されるかもしれないと思った時、急に怖くなった。
初めて...帰る日が来たとしても好きな人の傍に居たいと強く願ってしまった。自分の気持ちをきちんと認めて自覚したんだ。
「そしたらさ、おれの気持ちは何処にやればいいんだろうって。結果として君が居なくなってしまう日が来るならば、きちんと伝えて後悔しないようにしないといけないって思ったんだ。勿論、君の都合なんか知らない。おれ自身のエゴでね」
.........同じだ。この人の言う「好き」と私の想う「好き」。
勘違いしないで、と何度も何度も浮かぶ度に否定して言い聞かせて来た。でも同じだ。今度は否定出来ない。同じだ。
「ベレッタを最後まで守りたいってのは本気だし、それはベレッタがおれのこと何とも想ってなくても全然構わねェ。そういう風に見れないって言われてもおれは勝手にさせてもらう。おれの傍から離すことはない。離れるのは許さない。ただ、欲を言えばおれの気持ちをきちんと知った上でおれを好きになって欲しいし、おれを好きなった上で自分の意思で傍に居て欲しいと思ってる」
――いつから、私たちの気持ちは同じ方向を向いていたんだろう。
「おれからの告白は以上。今日は休みを取っ――...」
「私も、本気で、好きです」
いつも通り、のらりくらりと変わらない時間を過ごそう、なんてさせません。
自分だけ一方的に告げてスッキリしたような顔して...そんな勝手なことさせません。
「わ、私も同じです。自分の気持ちに蓋をしていました。だって、クザンさんは仕事で傍に居るだけだと思ってたから...蓋をしてました。それに私は...いつか帰る身だと私自身もずっと考えていて、どうしていいのかずっと分からなかった。何のために此処に来たのかもずっと考えて、分からなかった。でも、あの日...確かに私が"此処"にやって来たことには理由があって、それは...クザンさんの傍でないとダメだと思いました」
――私も、好きなんです。
そう告げた時、急に身を乗り出したクザンさんに引き込まれ、少し高さのあるソファーから身を落としてしまった。
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