ONE PIECE [LONG] | ナノ
#02

こう見えてあたしの家系は代々神官やってんだ。母国に災いが及ばぬよう神を崇める荷を背負って私も産まれて来た。時には祈り、時には戦い...母国の為にずっと生きて来た誇り高き一族だった。だが...大海賊時代の幕開け、それと共に馬鹿な海賊たちが母国に攻め込みやがった。金目なモンとか狙ってたんだろうが、ぶっちゃけそんなもんあるはずもねえのにさ。

で、あたしたちは勿論、国民も一丸となって戦ったが...戦力の差は歴然だった。王は死に、民は死に...そして我が一族が代々守り受け継いで来た"レガリア"の一つを奪い去った......ああ、"レガリア"ってのは神器のことだ。まあ...祀りごとに使ったりする道具だな。三つあるんだがどれをとっても価値のないもんだ。一つは宝珠、一つは刀、奪われたのは鏡。一つでも欠ければ災いは起きるとされた。

.........迷信とかじゃねえよ。実際、神の逆鱗に触れた。災いは起きた。

海賊たちが去って間もなくのこと。国土を覆う暗闇、荒れる海、豪雨が連日続いた。生き残った者たちの糧となる作物は育つどころか雨で流れた、逃げようとしても暴風・豪雨で海に出ることも叶わなかった。そして最悪な事に流行り始めた謎の疫病...当然、我々はなす術もない。母国は...半年も経たぬうちに滅んだ。その地から人が消えてしまえば神の怒りは解けたが...人が寄り付けば再び災いは起きた。まるで人を拒むかのように、ね。


「滅びた国の復興はまあ諦めた。今更...誰も帰って来ねえしな」
「ふーん...で、その作り話は終わりか?」
「作り話じゃないさ。実際にあたしが目の当たりにした現実だ」
「だとしたら何故お前は生きてる。人が消えたなら当然お前も消えてるはずだろ?」

当然の疑問で当たり前の指摘だ。作り話としてはよく出来ちゃいたがツメが甘ェよ。
これで三倍の酒が約束されたと笑えば、ベレッタもまた不敵な笑みを浮かべて切り返して来た。

「残りの神器を私が持っていたから生き残った」
「へェ」
「まあ...生き残ったところで一人。皆と共に死ねたら良かったのに、な」

疫病に掛かるとこなく、かといって疫病の抗体も持たなかったベレッタはたった一人、生きて国を出たという。

「で、残りの神器は今もあんのか?」
「ああ。この耳にあるのが宝珠、そして...刀」

.........刀。

「鞘はないのに何処から刀を出したか気になってたんだろ?」
「まァ...剣士なら誰だって気になる」
「私の刀に鞘は要らない。この身に宿ってるんだ」

身に宿る、そんな都合のいい刀なんて聞いたことねェ。

「嘘は吐いてない。それに...実際にあたしの刀見たろ?」
「.........あァ、あの時はな」
「ふーん...その言い方だと信じてないな」
「どうせ手品の類だろ?そういうのを信じるタチじゃねェからな」

手品ときたか、と笑うベレッタ。グイッと残った酒を飲み干して右の掌をおれの前に突き出した。

「残念だが手品じゃない」
「なら見せてみろよ」
「まあ、普通ならそう言うだろうな。勿論、お前になら見せるつもりではいるが、」

条件がある、と言いたげな表情におれは溜め息を吐いて頭を掻いた。

「なあロロノア...これも縁だ。頼む、あたしを助けてくれ」

「助けてくれ」と言う割には駆け引き染みたことを言いやがって...下手に出ることを知らねェのかと言いたいところなんだが表情を見る限り、おれがこの話に乗るだろうと踏んでいるらしい。頬杖をついたままにこにこと笑って、何処か楽しそうにしてる。

「.........内容によるな」
「単純なことだ。あたしは奪われた"レガリア"を取り戻したいんだ」

国の復興は望まず、だが海賊に奪われた価値はないと公言した神器を取り戻したい、と。
まァ...話が本当なら取り返したい気持ちは分からんでもない。自分たちの祖先が守り続けたものであり、身を投じて身内が守ろうとしたものであり、国民が命懸けで守ろうとしていた母国の遺産だ。おれがお前なら意地でも取り返すだろう。

「で、その在処は?誰とも分からん海賊が持ってんだろ?」
「そう。長期戦覚悟だったんだがあたしは運がいいらしい。アイツらは今この島をアジトにしてる」
「ほォ...」
「一人で行こうかと思ったが更に運がいいらしい。お前に会えた」

ニッと笑った彼女は恥ずかしげもなく「会えて良かった」なんて言いやがる。逆におれが恥ずかしくて困る。

「助けてくれるよな?」
「.........」
「そういうのを見殺しにするようなヤツじゃねえってのにも気付いてるぞ」
「.........」
「逆に、此処まで聞いて見殺しにするってのも武士道に反すると思うんだが」

.........随分、汚ねェ言い方する。余興だと言ったのはてめェだろ。
悪びれた様子もなくただただ私事に付き合えと言わんばかりの彼女。にこにこと笑っちゃいるが目に宿るものは強く堅い意思を感じる。

「刀を見せる条件がソレか」
「そう。世にも珍しい刀が見たくばあたしを助けてくれ」


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